<アスリート交差点2020>己と向き合う 桃田の指摘で原点回帰=バドミントン・奥原希望

引用元:毎日新聞
<アスリート交差点2020>己と向き合う 桃田の指摘で原点回帰=バドミントン・奥原希望

 来年の東京五輪を見据え、今年は佐藤翔治コーチとスイングやフットワークを基礎から見直してきました。夏の世界選手権や五つのワールドツアーで準優勝と結果は悪くないのですが、トップ選手たちにほとんど勝てず、モヤモヤが続いていました。

 最も低調だったのは9月のワールドツアー2連戦で、世界選手権の疲れがありました。中国オープンでは膝の故障から復帰した2016年リオデジャネイロ五輪金のマリン(スペイン)に1回戦負け。続く韓国オープンは格下に準々決勝で負けました。自信を失い、自分が何で勝負するのか分からなくなりました。コーチと話しても、うまくいかない理由を理解できません。そんな時、救ってくれたのが男子エースの言葉でした。

 「奥原の一番の強みは動くスピードのはずなのに、今は全く無い。プレッシャーがかからず、やっていて相手は怖くない。昔は、がむしゃらにシャトルの下に走って打っていたはず」

 日本代表で同学年の桃田賢斗選手(NTT東日本)に指摘されました。「練習で世界トップクラスと対戦するイメージを持てない」とこぼすと、「甘い。その程度の覚悟なのか。自分で練習からイメージしてやるしかない」。はっきりそう言われたのです。

 桃田選手は練習から試合をイメージして自分を追い込んでいます。一方、私は17年秋に右膝を故障してから、「1日の練習をどう乗り切るか」ばかりを考えがちでした。技術を一から見直す中で、四隅に正確に返球することに頭が行きすぎていました。けがをして、守りに入っていたのでしょう。桃田選手との会話が転機となりました。

 練習で目の前の一球に全力で向き合うことから始めました。最初はすぐに息が上がり、軽いギックリ腰を起こして合宿も久々にリタイアしました。地獄のような日々でしたが、「これが私」と充実感がありました。実際にシャトルの下に速く入ることを意識すると、良い体勢で相手を見ながら打てるので、技術のベースアップが生きてきます。

 10、11月のワールドツアーではマリンに勝つなど世界トップ選手を相手に良い試合が続き、同じレベルでやりあえている手応えがあります。光がはっきりと見えてきました。20年も一瞬一瞬、私らしく積み上げていけば、到達したい場所に行ける。自分の年にしたいです。

 ◇尊敬する人を教えてください。

 フィギュアスケートの浅田真央さんです。全国民の期待を背負って戦うアスリートはなかなかいないですし、2014年ソチ五輪後もすぐに引退せず、トライを続けたことにも心を打たれました。期待を背負い、もがきながらも勝負から逃げなかった彼女の強さは真のアスリートだと思います。結果を出すことがすべてではなく、取り組む姿勢も大切さだということを、真央さんを見て学びました。

 ◇奥原希望(おくはら・のぞみ)

 長野県大町市出身。2011年の全日本総合女子シングルスで史上最年少(16歳8カ月)優勝。16年リオデジャネイロ五輪銅メダル、17年世界選手権優勝。太陽ホールディングス所属。24歳。