バド世界一・桃田賢斗、大丈夫か　交通事故で負傷…「五輪金」へ後遺症の心配は？

　「金メダルに最も近い男」に衝撃の事態だ。バドミントンの男子シングルス世界ランキング１位の桃田賢斗（２５）＝ＮＴＴ東日本＝が乗っていた車が、マレーシアの首都クアラルンプール近郊で交通事故に遭い入院した。命に別条はないが、心身の後遺症が気になる。世界で敵なし状態の桃田は「東京五輪金」という任務を果たすことができるのか。

　前方部分が原形をとどめていないほどにひしゃげた白いワゴン車が、事故の大きさを物語っていた。１３日午前５時ごろ、遠征先から帰国途中だった桃田ら日本人３人を含む５人を乗せた車は、クアラルンプール空港に向け高速道路を走行中、前方の大型トラックに追突、ワゴン車の運転車が死亡した。

　桃田は顎、唇、眉間の裂傷のほか、唇付近を縫い、全身打撲も負ったという。鼻を骨折したとの報道もある。現地の病院で経過観察中で、日本協会の関係者は「会話はできる。自力で歩ける」と状態を説明している。

　金メダル最有力候補として、心身ともに良好なコンディションを求められるだけに後遺症などの懸念はぬぐい切れない。

　山野美容芸術短期大学客員教授で医学博士の中原英臣氏は、「（顔の）けがに関しては、全治２週間程度で、後遺症の心配もないだろう。ただ、帰国後の精密検査などで骨折が見つかるなどすれば、全治１カ月程度かかる可能性があり、状況は変わる」と話す。

　懸念されるのは自然災害や事故、犯罪など命の不安を覚えるような外傷的体験を経験した場合、強い不安感や恐怖感に苦しむＰＴＳＤ（心的外傷後ストレス）など精神面への影響だ。

　中原氏はＰＴＳＤについては「個人のキャラクターによる面もある」と指摘。１６年に違法カジノ問題で無期限出場停止処分となったことを引き合いに「出場停止から立ち直った強い精神力を持っているとみられ、あまり心配はないのではないか」とみる。

　世界ランキング１位の桃田は、代表入りを左右する獲得ポイント数でも日本勢で独走しており、五輪出場は確実だ。だが、３月の全英オープンなど今後の大会出場に影響が出る恐れもある。

　スポーツライターの小林信也氏は「容体が最も心配される」とした上で、「五輪前の国際大会に出られないとなればランキングが下がり、五輪の組み合わせで序盤から強い相手と戦う回数が増える可能性はある。ただ、ライバルが桃田を五輪直前に研究できる回数が減り、桃田も対策を練る時間が増えるという考え方もできる」と話す。

　災いをチャンスに変えられるか。