引用元:Rallys
5分でガラリと変わる卓球の見方、第7回のテーマは「ミックスダブルス」だ。
卓球の「ミックスダブルス」は東京五輪新種目となるが、全日本選手権をはじめ、ワールドツアーや世界選手権においては採用されており、卓球ファンが目にする機会は多い。
【写真】東京五輪金メダル獲得が期待される水谷隼・伊藤美誠
また、2017年には、新垣結衣と瑛太が主演のミックスダブルスを題材にした映画『ミックス。』も話題になった。実際に複数の卓球選手が出演していることなどもあり、鑑賞された卓球ファンの方も多いかもしれない。
今回はそんな「ミックスダブルス」について、解説していきたい。 写真:混合ダブルス優勝を果たした水谷隼/伊藤美誠ペア/提供:ittfworld前提:ダブルスのルール話の前に、一度卓球のダブルスのルールについて確認しておきたい。
卓球のダブルスにおける特徴的なルールの一つに、「ペアを組んだ二人は交互に打たなければならない」というルールがある。テニスやバドミントンのダブルスと異なるこのルールが卓球のダブルスならではの面白さを生み出している。
また「1ゲームごと(および最終ゲームのどちらかのペアが5点に達した時)に、打球の順番が変わる」というルールもある。
つまり、ミックスダブルスにおいては、異性からボールを受けて同性に対してボールを返すゲームと、同性からボールを受けて異性に対してボールを返すゲームが交互に訪れることになる。
これらの点を念頭に置きながら、ミックスダブルスの特徴を見ていきたい。 写真:唯一無二のボールを放つ中国の許昕(ペア:劉詩雯)/撮影:ラリーズ編集部ミックスダブルスの特徴<1.男子の威力あるボールを女子が対応する難しさ>
前述のように、ミックスでは女子選手は男子選手のボールに対応する必要がある。
スポーツ全般に言えることだが、体格による球威の差というものが必ず存在する。卓球においても同様であり、一般的に女子のボールよりも男子のボールの方が威力、つまり速さや回転量がある。
速いボールへの対応の難しさは言わずもがなだが、普段受けている女子選手より回転量の多いボールへの対応は想像以上に難しい。
2019年グランドファイナルにて、伊藤美誠(スターツ)も中国の男子選手許昕(シュシン)のボールを「1回目(の対戦)は1,2本しか返せなかった。ほんとに(アルファベットの)“J”くらい曲がる」と表現し、苦戦したことを明かしている。
卓球はボールの回転がプレーに大きな影響を与えるスポーツであり、ボールの回転量に合わせて、ラケットの角度調整が必要となる。
試合の中で相手の打球に合わせて細かな調整をし対応するが、普段同性から受けているボールよりも回転量が多いことでミスも増え、対応に時間を要することになる。
<2.女子特有のボールを男子が対応する難しさ>
一方で、男子が女子のボールを受ける際にも、対応が難しい点が存在する。それは、打球点の速さとボールの回転量の違いだ。
まず、打球点の速さについて、一般的に男子に比べると、女子はプレー領域としては前陣に位置することが多く、プレーのピッチが早い、すなわちワンテンポ早くボールが返ってくる。そのため、普段よりも打球までの時間が短くなり、自分の思考やプレーの選択肢を狭めることになるため、試合の中で慣れていく必要がある。
次にボールの回転量の違いだ。先ほど、女子は男子のボールの回転量の多さに苦慮するという話をしたが、逆に、男子は女子のボールの回転量の少なさに苦慮することがある。
前述のとおり、ボールの回転量に合わせて、ラケットの角度調整が必要となるからだ。加えて、ボールに強い前進回転を与える「ドライブ」を多用する男子に比べて、女子は回転よりもスピードを重視した「スマッシュ」を使う割合が多い。
ドライブで返球されるパターンとスマッシュで返球されるパターンではボールへの対応の仕方も変わってくるため、普段のプレーとは考え方を切り替える必要がある。
以上のように、ミックスダブルスでは「異性からのボールに対して、いかに早く対応できるか」が大事な要素となってくる。
多くのスポーツでは体格による差はハンデのような形で表れてしまう。しかし、プレーの特徴自体が武器となり、男子も女子もお互いの特徴を活かして対等にプレーできるというのは、卓球のミックスダブルスならではの魅力と言えるだろう。五輪金メダルの期待がかかる「ミックスダブルス」東京五輪から新種目として採用されるミックスダブルスだが、ロンドン五輪銀メダリストの平野早矢香さんは、「水谷隼選手と伊藤美誠選手のペアが金メダルに一番近いのでは」と注目した種目として挙げている。
実際、水谷/伊藤ペアは、3月のカタールオープンで優勝を果たすなど目覚ましい戦績を残している。金メダルの期待がかかる卓球の「ミックスダブルス」に是非注目してみよう。 ラリーズ編集部