ピークずれた影響大 故障者、若手にはプラスも―東京五輪

引用元:時事通信

 五輪史上初の延期決定で、選手は前例のない対応が求められる。冬季のスピードスケートと夏季の自転車で計7度出場した橋本聖子五輪担当相は、1年延期論が浮上した後の2月28日、衆院予算委員会でこう答弁した。「アスリートの観点から言うと、4年に1度に合わせてしっかりとした準備を整えてきた以上、延期はあり得ない」
 例えば、柔道やレスリング、ボクシングといった階級別で争う競技は、きつい減量をして試合に臨む選手が多い。年齢を重ねるごとに、体重を減らすことは難しくなる。「軽量級の方がつらいだろう」と話す柔道の五輪メダリストもいる。

 2016年リオデジャネイロ五輪でレスリング男子フリースタイル57キロ級銀メダルの樋口黎(日体大助手)。優勝した昨年12月の全日本選手権前の1カ月間、野菜中心の食事で過ごした。「東京五輪までなら、減量にも耐えられる。あと半年と少しですから」。そんな思いを繰り返すかと思うと、精神的にもつらい。

 今夏にピークを合わせて綿密に計画を実行してきた選手にも、体力の衰えにあらがいながら鍛錬を積んだベテランにも、1年の持ち越しは大きく響く。昨秋ラグビーのワールドカップ(W杯)で活躍した福岡堅樹(パナソニック)は東京五輪で7人制に挑んだ後、医学部を受験する意向だった。今夏を競技生活の集大成と位置付けていた選手は数え切れない。決定は人生設計をも左右する。

 一方で、交通事故で眼窩(がんか)底骨折が判明し、手術を受けたバドミントンの桃田賢斗(NTT東日本)のように故障があった選手、伸び盛りの若手にとってはプラスに働くかもしれない。最悪の中止は回避され、自国開催の晴れ舞台で力を示す機会は残された。準備期間が長くなったと捉え、前向きに21年を目指すしかない。