競技特性に即して再始動 緊急事態宣言解除後のスポーツ界

引用元:産経新聞

 新型コロナウイルスの感染拡大に伴う緊急事態宣言の全面解除を受け、スポーツ界も再始動する。ただ、一気に新型コロナが流行する以前の状態には戻れない。感染の第2波を抑えるため、現場は競技特性に即した課題にそれぞれ向き合っていく。(東京五輪取材班)

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 「柔道は密閉ではなくても密着はする。優先すべきは感染拡大の防止」。全日本柔道連盟(全柔連)の中里壮也専務理事はこう語る。相手と組み合い、寝技もあるため、全柔連は6月1日から畳での練習再開の指針を3段階にまとめ、全国に通達した。

 「第1段階」では練習時間を1時間以内に限定し、相手と組み合わない。学校の部活動が再開されれば寝技を含む打ち込みなどを可能とする「第2段階」へ移行する。乱取りは、練習時間を2時間以内に延ばす「第3段階」からで、マスク着用も義務付けない。4週間以上を目安に感染者が出ないことを条件とした。

 レスリングも柔道と同様、組み合わずに練習するのは難しい。日本協会の指針では、緊急事態宣言解除後の1~2週間程度は選手同士が接触しないトレーニング内容とし、体調不良者が出なければスパーリングをはじめ本格的な練習を再開できるなどと定めた。

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 バドミントンは約5グラムのシャトルを操る。わずかな風がシャトルの軌道に影響するだけに、日本協会関係者は「(感染防止のための)換気が一番の懸念点だ」と指摘する。常に窓などを開けて体育館内に風を通すのか、プレー以外の時間に空気を入れ替えるのかなど現実的な方法を模索している。

 海外では競技再開の第1段階として、「屋外で、家族以外のプレーはシングルスのみ」(イングランド協会)、「できればシャトルは持参すること」(スイス協会)といった方針を示しているところもある。

 共用物の取り扱いは、どの競技も気を配る点だ。バレーボールVリーグの久光製薬は約20人のチームを2班に分け、ボールを籠に戻すたびに消毒することを徹底。日本体操協会も加盟団体に器具の定期的な消毒などを求めている。大学の陸上指導者は「スターティングブロックは1人が使い終わったら拭く必要があるかもしれない」と語る。

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 同じ室内競技でも水泳は事情が少し異なる。スポーツ庁は学校での水泳授業について、塩素濃度が適切に管理されていれば「水中感染のリスクは低い」と指摘。更衣室やプールサイドでの感染予防が重要となりそうだ。

 日本スイミングクラブ協会が公表したガイドラインでは、更衣室の利用時間を最小限にするため、水着着用での来場を促すほか、タオルの共有や脱水機の利用を禁止。鼻から下を覆うフェースシールドなどを着用した指導を推奨している。

 大手スポーツクラブのセントラルスポーツは、スイミングスクール再開時の注意点として、コーチと生徒の距離を1メートル以上維持することや、飛(ひ)沫(まつ)拡散防止のためにハンドシグナルを活用する方針を示している。