【五輪の友】惨敗から常勝軍団へ…注目浴びてさらに強くなったリレー侍

引用元:スポーツ報知
【五輪の友】惨敗から常勝軍団へ…注目浴びてさらに強くなったリレー侍

 陸上のトラック種目で、最も東京五輪金メダルに近いのが男子400メートルリレー。銀メダルに沸いた16年リオ五輪の2年前に喫した惨敗が、“お家芸”に上り詰めた原動力の一つになっている。14年仁川アジア大会決勝。宿敵の中国に0秒50、距離にして5メートル差で敗れて2位。リオと同じ第2走者を務めた飯塚翔太(28)=ミズノ=は「完全に負けましたね。まさか、という感じ」と、当時を振り返った。

 優勝タイム37秒99はアジア新。当時の日本記録(38秒03)を上回られたのも衝撃だった。飯塚は決勝後、山県亮太(27)=セイコー=が部屋を訪ねてきて、対策を語り合ったのを覚えている。「どう頑張るか。技術だけじゃなく走力も必要だと思いました」。個々の走力向上に取り組んだ上で、バトンも成熟させた。「僕は学生の頃から(代表で)やっていますが、体の真横とか近いところで渡していたのを、腕を伸ばして利得距離を稼いで受け渡すようになった。かなりタイム短縮につながった部分はありますね」と飯塚は明かす。

 リオ後、世陸は17年ロンドン、19年ドーハと2大会連続銅メダル。18年ジャカルタ・アジア大会は、中国に雪辱して金メダルに輝いた。リオの銀がもたらした最も大きな成果は、リレーの“常勝軍団化”だろう。注目が注目を呼び、メディア露出も増えた。試合会場ではサインを求め、長蛇の列ができる。飯塚は「こういう雰囲気を味わい、もっと頑張りたいという自覚が出るのが大きい。見られている方も、頑張るんですよね」。世界大会で結果を出しつつ、桐生祥秀(24)=日本生命=はユーチューバーとして発信するなど、活動の幅を広げている。

 400メートルリレーの東京五輪金候補は“3強”の構図だ。19年世陸王者で、圧倒的な走力を武器に押し切る米国。17年世陸王者で、バトンワークと走力をバランスよく高めてきた英国、そして日本。飯塚は「バトン精度と、走力向上しかない。米国と英国は強いですが、挑戦者の気持ちで乗り越えるやりがいはあります。追いかけ続けて、極め続けられる」。金メダルまでのあと一歩は、とてつもなく険しい。だからこそ、挑戦から目が離せない。

 ◆細野 友司(ほその・ゆうじ)1988年10月25日、千葉・八千代市生まれ。31歳。早大を経て2011年入社。サッカー担当を経て、15年から五輪競技担当。16年リオ五輪、18年平昌五輪を現地取材した。夏季競技は陸上、バドミントン、重量挙げなどを担当し、冬季競技はジャンプをはじめとしたノルディックスキーを担当。 報知新聞社