来春閉校の県立高校 人数不足のバスケ部が必死に守り抜いたユニホーム

来春閉校の県立高校 人数不足のバスケ部が必死に守り抜いたユニホーム

 新型コロナウイルスの影響で今夏、さまざまな競技大会が全国規模で中止に追い込まれ、晴れの舞台を失った高校スポーツ界。各競技団体などがそれぞれ工夫を凝らし、独自の代替大会が準備・開催される中、特別な思いで部活動に汗を流す高校生アスリートがいる。来春閉校する宮崎県立都農(つの)高(梅津政俊校長、72人)の生徒たちだ。コロナ禍に見舞われる中、“高校生活最後の試合”に臨む姿をカメラで追った。 (写真と文・佐藤雄太朗)

 男子バスケットボール部は昨年6月の新チーム発足時、大会に出場するには部員2人が足りなかった。都農高単独で高校総体県予選に参加するためには部員を補う必要がある。不足のままだと他校と合同チームを組むしか出場できない。それは「TSUNO」のユニホームとのお別れを意味した。「最後まで、いや、最後だからこそ、TSUNOにこだわりたい」。主将の橋口晃之(17)、児玉竜基(17)、脇園光星(18)が奔走し、やっと新入部員3人の勧誘に成功した。

 高校最後の晴れ舞台に向けて万全の態勢を整えると、自然と練習にも熱が入った。そんなさなか、新型コロナウイルスの感染が広がった。学校は臨時休校となり、高校総体も中止へ-。突然の変化に、何も考えられなくなった。

 高校バスケットボールは毎年冬に開催される全国高校選手権(ウインターカップ)も憧れの舞台の一つ。しかし進学や就職活動が控えるため、当初から県予選の辞退が決まっていた。

 「自分にとって、学校にとっても最後のユニホームが…」と、肩を落とした橋口主将。「このまま終わるのか」

 そこで立ち上がったのが脇田亜門顧問(28)。「学校はなくなるが、10年、20年先も続く仲間であってほしい」。高鍋高男子バスケットボール部の吉野栄造顧問(41)に相談して、地元5校の3年生による“引退記念の交流試合”を開催することが決まった。

 6月14日、高鍋高の体育館。最後の試合の終了間際に笑顔で円陣を組むと、「TSUNO」と書かれた白いユニホームが輝くようだった。「一緒に汗を流した絆は卒業後も続いていく」。部員みんなが確かめ合った瞬間のように感じた。

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 ◆宮崎県立都農高 1952年に県立高鍋高都農校舎として発足し55年から都農高。2000年代に入り少子化が続き、16年に高鍋高との再編統合が決定、21年春に閉校する。現在の全校生徒は3年生のみ72人。体育系の部活は男子バスケットボール部、バドミントン部、水泳部、剣道部、空手道部。所在地は宮崎県都農町川北4661。西日本スポーツ