来春閉校の県立高校 一人ぼっちの剣道部員は「団体戦に憧れていた」

来春閉校の県立高校 一人ぼっちの剣道部員は「団体戦に憧れていた」

 新型コロナウイルスの影響で今夏、さまざまな競技大会が全国規模で中止に追い込まれ、晴れの舞台を失った高校スポーツ界。各競技団体などがそれぞれ工夫を凝らし、独自の代替大会が準備・開催される中、特別な思いで部活動に汗を流す高校生アスリートがいる。来春閉校する宮崎県立都農(つの)高(梅津政俊校長、72人)の生徒たちだ。コロナ禍に見舞われる中、“高校生活最後の試合”に臨む姿をカメラで追った。 (写真と文・佐藤雄太朗)

 「自然と涙があふれました」。剣道部の黒木謙始呂(17)は、今夏の高校総体中止の第一報を聞いたときをそう振り返った。

 部員は1人。練習相手を求めて町の道場に通うなどして腕を磨いてきた。「母校の名にかけて勝負する団体戦に憧れていた。でも結局、高校3年間、果たせなかった」。その分、個人戦にかける気持ちは人一倍強かったが、県予選も中止になりかなわぬ夢となった。

 新型コロナウイルスの影響はなおも続き、通い慣れた道場は利用できないため、今は学校の武道場で黙々と竹刀を振る日々だ。代替大会は9月。「高校生活最後の試合。勝ち負けにこだわらず、その先にある、心技体そろった剣の道を追求したい」。額に無数の汗を浮かべ力を込めた。

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 ◆宮崎県立都農高 1952年に県立高鍋高都農校舎として発足し55年から都農高。2000年代に入り少子化が続き、16年に高鍋高との再編統合が決定、21年春に閉校する。現在の全校生徒は3年生のみ72人。体育系の部活は男子バスケットボール部、バドミントン部、水泳部、剣道部、空手道部。所在地は宮崎県都農町川北4661。西日本スポーツ