「今は五輪、考えないように」 バド奥原希望の1年前

「今は五輪、考えないように」 バド奥原希望の1年前

 東京五輪のことは、あまり考えないようにしている。バドミントン女子シングルスの奥原希望(25)=太陽ホールディングス=は言い切る。2019年とは違う、2度目の「五輪1年前」の心境を聞いた。

【写真】オンラインで取材に応じた奥原希望

 「今はあまり、オリンピックのことは考えないようにしています。日々、課題を克服していくことに集中しているので」

 オンラインで取材に応じた奥原は冷静だった。

 昨夏は、「五輪本番でいかに戦うか」を常に意識していた。新たなラケットを採り入れ、コンパクトな振りを追究。得意のフットワークでも、重心の位置を見直すなど試行錯誤を繰り返していた。

 それが、今は「五輪のことは頭に数%あるかな、くらい」だという。「金メダル」という目標は変わらないが、五輪の情報やネットのコメントは見ない。

 「大会があるとか、ないとか、あいまいな情報や周囲の意見に流されたくない。そういう感情に左右されると、苦しくなる」

 海外を転戦するバドミントン特有の事情もある。9月に国際大会が再開される予定となっているが、各国の渡航制限の影響を受けやすいため、中止や延期の可能性も高い。毎月のように海外で試合をしていた生活からは大きく変わった。

 3月の全英オープンで、リオデジャネイロ五輪銀メダリストのライバル、シンドゥ・プサルラ(インド)を準々決勝で下すなど、手応えをつかんでいた。それから4カ月、スピードアップや守備の強化を意識して練習を積むうちに、「パフォーマンスがどんどん上がった」という。

 それだけに、もどかしさはある。「このままずっと練習していても、発揮する場はないのかな、と思ってしまう。試合に照準を合わせたり、先を見たりすると、苦しい部分はある」

 普段と違い、決して前向きな言葉ばかりではない。ただ、あえて口にする。

 「不安で、弱い自分もいる、と受け止めるようにしている。ネガティブな感情も否定しないように。そういう感情とうまく付き合うように」と。朝日新聞社