広島・森下暢仁が防御率2.04、QS率76.47%の安定の投球で新人王へ!

広島・森下暢仁が防御率2.04、QS率76.47%の安定の投球で新人王へ!

いよいよシーズン大詰めのプロ野球ペナントレース。J SPORTS 1の「J SPORTS STADIUM2020」で主催試合がプレーボールからゲームセットまで生中継されている、広島東洋カープの戦いも最後まで目が離せない。そんな広島で注目されているのが今季入団したルーキー、森下暢仁の新人王争いだ。

■明治大学を日本一に導き、日米大学野球でもMVPを受賞!

大分県出身の森下はスポーツ一家に生まれ育った。父はソフトボールと剣道、母はバレーボール、姉はバドミントンに打ち込み、森下も小学3年から野球を始めた。弟も現在、國學院大學の野球部に所属している。地元の強豪・大分商業高校に進んだ森下は、1年夏に甲子園出場を決め、控え投手ながらベンチ入りを果たした。しかし、その後は甲子園の土を踏むことはできず、明治大学に進学し、1年春から神宮球場のマウンドに上がった。

キャプテンとなった4年春には東京六大学春季リーグで優勝、全国大学選手権でも準々決勝で完封、決勝で完投勝利を挙げ、最高殊勲選手賞に輝く活躍でチームを日本一に導いた。その夏の日米大学野球選手権でも3試合に登板して2勝、防御率1.20の好成績を残し、大会MVPを受賞している。そして迎えた昨年のドラフト会議で、佐々木朗希、奥川恭伸ら高校生が複数指名と人気を集める中、広島から単独1位で指名を受けた。プロ入りを決めて新調した森下のグローブには、それまで支えてくれた家族全員の名前の漢字1文字ずつが記されているという。

■8月は完封を含む3勝を挙げ、その後も安定したピッチング

開幕3戦目、6月21日の横浜DeNA戦に先発した森下は、7回を投げ、4安打無失点、8奪三振と好投するも、チームは逆転サヨナラ負けを喫し、プロデビュー戦を勝利で飾ることはできなかった。だが、2戦目の中日戦で8回まで無失点の力投を見せ、見事プロ初勝利をマーク。7月は一時コンディションを崩し、1軍登録を抹消されたものの、7月23日の阪神戦で先発ローテーションに復帰し、プロ入り初の2桁となる10三振を奪って快勝した。

8月は先発した4試合全てQS(クオリティスタート:先発投手が6回以上を投げて自責点3以内に抑えること)という安定感抜群の投球で3勝。8月14日の阪神戦では無四球でわずか2安打しか許さず、先発全員から12三振を奪い、2塁を踏ませない完璧な投球でプロ初完投を完封で飾った。9月は1勝にとどまったが、10月に入るとギアを上げ、東京ヤクルト戦に連勝。10月17日の中日戦では明治大学の先輩・柳裕也と投げ合い、後続の投手が打たれてチームは逆転負けしたものの、自身は7回を無四球1失点の好投を披露するなど、その後も安定したピッチングを続けている。

■ストライクゾーンを立体的の捉える抜群の制球力が武器

10月26日現在、9勝3敗、防御率2.04で、17試合中13回のQS率76.47%という安定感を誇り、巨人の戸郷翔征と激しい新人王争いを繰り広げている。森下の投球の生命線は150km台のストレートと、多彩な変化球の繊細なコントロールだ。大きく落ちる縦のカーブで上下のゾーンを使い、鋭く曲がるカットボールで横のゾーンを使う。さらにカーブやチェンジアップは、相手打者や試合状況によって落とす位置を変えている。前後の奥行きも使い、ストライクゾーンを平面ではなく立体的に捉える、ルーキーらしからぬ洗練されたピッチングを続けているのだ。森下が残りの試合でも安定した好投を続け、広島歴代10人目の新人王に輝けるか注目だ。

文=田口裕(エンターバンク)HOMINIS