男女の結束力でメダルへ 現代反映する混合種目―東京五輪・ミックスで勝負

引用元:時事通信
男女の結束力でメダルへ 現代反映する混合種目―東京五輪・ミックスで勝負

 7月24日に開幕する東京五輪は、女性の活躍が広がる社会をより反映した大会になりそうだ。国際オリンピック委員会(IOC)が男女平等を推進し、東京大会の女子選手の参加率は過去の五輪で最高の48.7%に達する見込み。

 男女がほぼ均衡する大会を象徴するのが、各競技で近年採用が進む混合種目だ。東京大会では新たに設けられる陸上、水泳、柔道などを含め11競技(元来区別のない馬術を含む)で実施される。日本のメダルの期待が高い競技に焦点を当てた。

 ◇先輩と後輩、歴史切り開く=中学時代から相性抜群―バドミントン
 日本のバドミントン界では、男女の各ダブルスが優先され、混合ダブルスは重視されてこなかった。東京五輪を前に、強化が遅れていたこの種目で渡辺勇大(22)と東野有紗(23)のペア(ともに日本ユニシス)が急成長を遂げた。昨夏の世界選手権では混合複の日本勢として初のメダル(銅)を獲得。躍進が目覚ましい他種目に肩を並べようとする勢いがある。

 福島県富岡町の同じ中学校と高校で、先輩と後輩の間柄だった。東野が1学年上。初めてペアを組んだ時から、互いに相性の良さを感じた。渡辺は中学2年当時を「そのリズムで打ってほしいという時に打ってくれた。気持ちの良いプレーができた」と思い返す。先に高校を卒業した東野は、自分が進んだ実業団への入社を渡辺に勧め、その思いに後輩が応えた。世界を目指す心構えが固まった。

 渡辺は男子複でも五輪を目指しており、広いコートカバーと硬軟自在のショットが戦いの軸。日本ユニシスの早川賢一コーチは「東野の決め切る力が優れているので、世界と対等に戦えていると思う。女子ではなかなかできない」と前衛を務める東野の決定力も評価する。ペアは2年前の全英オープンで優勝して世界トップの仲間入りを果たし、その後の成績も安定。「この五輪レースを自分たちはすごく楽しめている」(東野)との言葉には力がある。

 渡辺も「さらに成績を伸ばし、他種目に劣らないくらい認知されるようにしたい」。混合複は東京五輪のバドミントン全5種目で最も早い7月31日に決勝を実施。ここで頂点に立って主役になるのが2人の目標だ。

 ◇譲れぬ初代王座=カギは体調維持―柔道混合団体
 五輪初採用となる柔道の混合団体は、男女各7階級の個人戦を終えた翌日の8月1日に行われる。日本は世界選手権で導入された2017年大会から3連覇。初代五輪王座は譲れないところだ。

 チームは男女各3人の計6人で構成。体重区分は男子が73キロ以下、90キロ以下、90キロ超、女子は57キロ以下、70キロ以下、70キロ超。各試合で引き分けはなく、どちらかが4勝して勝敗が決した時点で終了する。3勝3敗になると、無作為に選ばれた区分の選手同士による代表戦で決着をつける。団体要員の登録が認められた世界選手権と違い、五輪は個人戦代表のみで争う。

 五輪会場と同じ東京・日本武道館で昨夏行われた世界選手権。優勝した中で戦い方の課題が見えた。女子57キロ級の芳田司(コマツ)は銀メダルだった個人戦から中4日で臨み、「体がすごく疲れてしまっていた。(五輪は)多分もっと疲れている。それでも勝てるように、気持ちと体の整理の仕方を研究しないといけない」と振り返った。

 男女の最重量級代表にとっては、個人戦から連日の試合となり、けがをすれば不利となる。日本女子の増地克之監督は「きついと思うが、相手も同じ条件。五輪では頑張ってもらいたい」と奮起を求める。

 昨夏の世界選手権で大野将平(旭化成)は男子73キロ級との2冠を達成した。「個人戦と違うプレッシャーや面白さがあり、怖さも感じた」と話す。男女が円陣を組んで気合を入れ、試合場のそばで並んで声援を送る姿は五輪で新鮮な光景となろう。日本にとっては柔道発祥国として地元の期待も大きい。厳しい日程の中で体調を維持し、重圧を力にできれば、誇りを示す結果をつかめるはずだ。

 ◇静岡・磐田コンビで目指す金=安定感の水谷、伊藤に爆発力―卓球
 東京五輪の卓球は男女の個人戦と団体戦に、初実施の混合ダブルスが加わる。全種目でメダルが有望だが、金の可能性が最も高いのが混合複だ。団体戦メンバーの男女各3人からペアを結成する規定で、日本はベテランの水谷隼(木下グループ)と女子のエース伊藤美誠(スターツ)が組む。

 昨年7月にペアを結成したばかり。ワールドツアーなどで常に優勝争いに加わっており、経験の浅さを感じさせない完成度を誇る。実績を評価した日本協会は代表メンバーを発表した1月6日、混合複のペアも予定を前倒しして決定した。

 2人とも静岡県磐田市出身。子どもの頃からお互いを知っているという伊藤は「性格も分かるし、しっかりと言い合える関係」。19歳と30歳。年の差が開いていても遠慮とは無縁で、思い切ったプレーができている。

 男子代表の倉嶋洋介監督は「高い安定感と爆発力があり、日本では最も金メダルに近いペア」と評価する。男子選手でも苦戦する伊藤の変幻自在なサービスやレシーブが、サウスポー水谷の安定感とマッチ。経験豊富な水谷が状況に応じた戦術を考え、それを実行する技術が伊藤に備わっているのも大きい。

 今回が4度目の五輪となる水谷の手応えも十分。「ワールドツアーは決勝で負けているけど1、2本の差。それをどう覆すかを研究して練習すれば、金メダルはある」。頂点を取るための筋道が、はっきり見えている。昨年苦しんだ腰痛の不安は徐々に解消。「練習もできなくて迷惑を掛けた。今年は彼女をびっくりさせるくらい練習して引っ張りたい」。リオデジャネイロ五輪では個人で銅、団体で銀。経験豊富な先輩の状態が上向きなのも心強い。