新型コロナウイルス・・・センバツ高校野球はどうなる?4日に運営委員会が協議

新型コロナウイルス・・・センバツ高校野球はどうなる?4日に運営委員会が協議

 「野球だけずるいよ。全国選抜にむけて頑張っていたのは高校球児だけじゃない。他の競技は、高校生の頑張りは別なんですか?私達だって全国の舞台立てるはずだった。そのための2年間だった。やるせない。」

【写真】各競技ごとの対応一覧表

 東日本大震災の時に目にした当時の高校生のツイートを、ふと思い出しました。

 新型コロナウイルスでの全国の高校スポーツ選抜大会、選手権大会への影響はさらに広がっています。新たに3月27日と28日に愛知県で行われる予定だった全国高等学校剣道選抜大会の中止が決まりました。

 高校野球の選抜大会は4日に行われる運営委員会で協議されます。ここ数日、インターネットなどでのコメントを見ていると、「なぜ早く決めないのか」などが目立ちますが、主催者では3月4日に運営委員会を設定している以上、その日に向かって色々な準備が行われているというのを理解しないといけません。

 この1週間で世の中は、想像できなかったほど大きく動きましたが、この間にも各所で調整の打ち合わせが行われています。それを経て設定された4日に協議する。4日という日付は、当初から予定されていた運営委員会の日です。例年ならば、ここが甲子園練習の日程や開会式の司会者などが決まり、発表されるタイミングです。さすがに今回は長い時間の会議になるかもしれません。

 ここからは私見ですが、少し考えてみたいと思います。新型コロナウイルスを受けての大会開催可否の対応策は大きく分けて4つあると思います。

(1)通常開催
 現在の世の中の状況を鑑みれば、最も可能性が低いと考えないといけないでしょう。阪神・淡路大震災、東日本大震災の時は、ブラスバンドなどの鳴り物応援をなしにしたという前例がありますが・・・

(2)限定的な開催
 大会期間の短縮。世の中が今後どうなるかにもよりますが、例えば3月27日から31日までの5日間開催にして、1回戦16試合のみで大会終了。この場合は1日だけ4試合日を作るという想定です。あるいは、全て4試合日にして、28日から4日間の開催にするというのも一つの手かもしれません。東日本大震災の時にも思いましたが、今回も世界的に深刻な状況の時に「絶対に頂点まで決めないといけないのか」という思いはあります。1回ずつ試合をする。それだけでも選手たちのモチベーションにつながるのはと思います。

(3)無観客開催
 現時点で最も可能性がある選択肢と予想できますが、その中でも2通りあると思います。
 その1が全試合の無観客。その2は、2010年の口蹄疫の時の宮崎大会(準々決勝まで無観客)のように、大会途中まで無観客にして、終盤に状況が好転すれば通常開催に戻す。好転しなければ、最後まで無観客開催。

(4)中止
 各高校スポーツと同じように、苦渋の決断で中止と判断するのが、最も安全な策ではあります。この場合は、「選手たちの夢」というのが心残りになるでしょうか。

 なお、阪神甲子園球場の使用状況や、1年間全体の高校野球のスケジュールを考えると、延期という選択肢はほぼないと言えるでしょう。土のグラウンドである阪神甲子園球場は、人工芝の神宮球場と違ってプロアマ併用日のノウハウはありません。しかも5月11日から17日を除いて阪神タイガースが1週間本拠地を空けるということがないスケジュールで、5月16日と17日は関西学生野球のリーグ戦が入っています。

 さらに春休み中に開催する全国大会を、1学期中にやるとなれば、文部科学省を含めて関係機関の理解を得るのが大変です。他の高校スポーツの選抜大会、選手権大会が延期ではなく、中止にしているのは、あくまでも春休みの全国大会というのが関係しているでしょう。

 そう考えると、延期という選択肢はないというのが考え方の一つです。

 ここまで、いわゆる費用の部分を考えずに色々と述べてきましたが、費用を考えるとさらに難題が多いでしょう。
 そして、野球は屋外スポーツではあるものの、ベンチ(ダッグアウト)や、試合前のアップをする室内練習場、試合前後のインタビュー通路など屋内とほとんど変わらない環境を使うことが多いです。試合のない日の、近隣グラウンドでの割り当て練習、一般客も宿泊しているチーム滞在のホテルと全国規模の大会を開催するには、無観客であってもリスクが0になるとは言えません。

 これは日本高等学校ゴルフ連盟HPの「屋外競技とはいえ、開催した場合に伴う移動や宿泊(相部屋など)に万全な対応が取れない」の発表文を見てもわかります。

 そして、プロなどの大人のスポーツと違い、学生スポーツは「保護者から学生たちを預かっている」ということを忘れてはいけませんね。

 全国各地で休校になり、練習ができない状況の中、開催を決めて練習ができない状況のまま大会に臨むと、ケガにつながるリスクがあります。これは全国高等学校体育連盟バドミントン専門部HPの「新型コロナウイルス感染拡大防止及び十分な練習することなく大会に臨んだ場合の安全性への危惧という観点から、全国選抜大会(鹿児島大会)の開催を中止します。」の発表文につながります。

 休校の中で開催を決めて、練習だけのために呼び戻してもいいのかという課題にも直面します。東日本大震災の時は、1校でも辞退すると開催できる状況にはならなかったと後日ある関係者から聞きました。今回も、開催するとなれば、今度は学校長や公立校は教育委員会に判断が求められるかもしれません。

 100年を超える歴史を持つ高校野球。他のスポーツと違った文化はありますが、かつて経験したことがない国難の中でどう方向性を決めていくか。それでも、決めるのは主催者です。決まったことを尊重する。それも忘れてはいけないことだと思います。 松倉 雄太