ボート・リオ五輪代表の中野紘志が引退へ 五輪消滅 開催不透明で「頑張れる気持ちではない」

ボート・リオ五輪代表の中野紘志が引退へ 五輪消滅 開催不透明で「頑張れる気持ちではない」

 ◇ボート 日本代表候補選考レース第2日(2020年3月21日 埼玉・戸田ボートコース)

 男子軽量級シングルスカル準決勝で、16年リオデジャネイロ五輪代表の中野紘志(32=中野紘志RC)は4位で決勝進出を逃し、日本代表入りの可能性が消滅した。22日の7~12位決定戦を棄権し、このレース限りで引退する方針。新型コロナウイルス感染拡大の影響で東京五輪開催が不透明となる中、必死にモチベーションを維持してきたベテランが艇を下りる。

 決勝進出圏の3位に2秒74届かず、準決勝1組で4位。レース直後から、中野は艇の上で激しくせき込み始めた。一見、肺炎のような症状に緊張が走ったが、原因は持病の運動誘発性ぜんそく。2大会連続の五輪出場の可能性が消滅し「引退しようと思う。一年一年積み重ねた先にパリ五輪があると思っているが、来年1年頑張れる気持ちではない」と言葉を絞り出した。

 新型コロナウイルスの影響で五輪の通常開催が危ぶまれる状況。中野は2年以上の延期や中止が決まった時点で引退する意向だった。「毎日これが最後の練習かもしれないと思っていたので練習には集中できた。力は出し切れた」と言い訳はしなかったが「世の中に自粛ムードが広まり、スポーツをしていいのかという思いはあった」と胸の内を吐露。パンデミックがモチベーション維持を困難にした感は否めない。

 4月のアジア予選と5月の世界最終予選が消滅。ボート以外でもバドミントンやテニスなど選考大会が行われていない競技は多い。4月の日本選手権が五輪選考会となる競泳なども本番の通常開催が見通せない中、十分な練習を積めていない選手がいることも予想される。32歳のベテランの引退劇は、新型コロナウイルスが現場に与える深刻な影響を浮き彫りにした。

 ◆中野 紘志(なかの・ひろし)1987年(昭62)12月1日生まれ、金沢市出身の32歳。一橋大でボート部に入部し、競技開始。09年世界U―23選手権で日本人初の銀メダルを獲得。16年リオ五輪では軽量級ダブルスカルに出場し15位。1メートル76、72キロ。