五輪1年延期、日本選手には“追い風” 桃田賢斗、全快で「金メダル」候補筆頭! 池江璃花子は奇跡の復活も

引用元:夕刊フジ
五輪1年延期、日本選手には“追い風” 桃田賢斗、全快で「金メダル」候補筆頭! 池江璃花子は奇跡の復活も

 東京五輪の1年延期は日本選手団にとって大きな追い風だ。国際オリンピック委員会(IOC)トーマス・バッハ会長(66)と安倍晋三首相(65)が24日、緊急電話会談を行い、7月24日に開幕予定だった東京五輪は、新型コロナウイルスの感染拡大のため、1年程度延期することを同意。IOCがその後開いた理事会で正式承認した。日本選手団は金メダル30個獲得を目標としていたが、予定通り開催された場合、水泳、陸上、体操など有力競技の惨敗が確実視されていた。しかし1年延期で、有力競技やサッカー男女代表は息を吹き返すことができる。白血病で断念した競泳・池江璃花子(19)の奇跡の復活も夢ではなくなった。(夕刊フジ編集委員・久保武司)

 東京五輪中止という最悪のシナリオは避けられた。バッハ会長とのトップ会談を終えた安倍首相は「東京五輪の中止はない、21年夏までをめどに開催することで同意した」と発表。日本側からの提案だった。

 これで東京五輪は必ず開催される。延期には課題も多いが、とらえ方によってはコロナ問題に苦しみ抜いている中、明るいニュースともいえる。日本オリンピック委員会(JOC)も、延期という方向性が決まったことで次のステップを踏み出すことができる。

 2月にJOCの山下泰裕会長は「東京大会での金メダルは30個を目標にする」と壮大な目標を掲げた。日本選手団が夏の五輪で獲得した金メダルの最多は、前回の東京大会(1964年)とアテネ大会(2004年)の16個。過去最多の2倍近くに当たる30個の金メダルという目標は、あまりに大風呂敷すぎるという声が圧倒的だった。

 日本が夏の五輪で金メダルを獲得したことがある競技の80%以上が柔道・レスリング・体操・競泳。この4競技こそが日本の「お家芸」。ところが、最近はほとんどの種目が世界ではなかなか勝てない大不振にあえいでいる。

 体操はこれまで主役だった内村航平(31)が故障続き、“ひねり王子”の白井健三(23)も「今夏の五輪だったら代表は無理」が大方の見方だ。

 北島康介(37)という大エースがいた競泳も、リオ大会400メートル個人メドレー金メダリストの萩野公介(25)が、この大会後から原因不明のスランプに苦しんでいる。

 コロナ問題の影響もあり男女18階級のうち、10階級で代表が決まっていないレスリングも、絶対に勝てる選手が不在。引退した吉田沙保里(37)、出場を逃した伊調馨(35)のような金メダルが確実視されている選手がいない。

 こんな苦境も、史上初の五輪延期で一気に好転する可能性がある。

 1月13日にマレーシアで追突事故にあったバドミントン男子シングルスの桃田賢斗(25)にとっても1年延期はありがたい。右眼窩底(がんかてい)骨折が判明して全治3カ月と診断されていた上に「シャトルが2重に見える」と訴えていただけに、1年後の金メダル有力候補として君臨できる。

 男女ともに「金メダル」を目標に掲げながら不振に苦しみ“共倒れ”の危機にあったサッカーも、大会延期はビッグニュース。男子は1月のU23アジア選手権で、3戦未勝利の1次リーグ敗退に終わり、嫌な雰囲気に包まれていたが、これで払拭できる。

 MF堂安律(21)=PSV=は「(延期に)少なからず驚きはあった。それと同時に1年後という新しい目標を立てられることをすごくポジティブに捉えている」と切り替えた。

 金メダル量産が期待される男女柔道も、もう一度強化策を練ることができる。

 女子の増地克之監督は「強化計画は全て見直し。前例のないことなので代表選考をどうするかも含めて、早急な議論が必要だ」とコメント。男子100キロ級のウルフ・アロン(23)は「早めに答えを出してほしかったので、ありがたい。準備のめどが立ち、プラスにとらえられる部分が大きい」と前向きだ。

 水泳は白血病で無念の断念となった池江璃花子の奇跡の復活だ。24年のパリ五輪で完全復活を目指していたが、「病院の先生の許可がやっとでました」と今月17日には406日ぶりとなるプールトレーニングを自身のSNSで公開。白血病は今や不治の病ではない。19歳という若さもあり、治療がうまく進めば劇的に回復する症例は多い。

 新型コロナウイルスでやられっぱなしだったが、まさに日本選手団に吹いた“神風”といってもいい。