まさかの延期 東京五輪の経緯をいま振り返る

引用元:日刊スポーツ
まさかの延期 東京五輪の経緯をいま振り返る

2020年東京オリンピック(五輪)・パラリンピックの1年以内の開催延期が決まった。振り返ると13年9月の開催決定以来、東京大会は何度も難局、混乱に直面しながら、それを乗り越えてきた。この機会にあらためてその軌跡を振り返ってみた。まだまだ難題が山積みで、新型コロナウイルスの脅威も衰えていないが、東日本大震災からの復興と再生の象徴でもある東京大会が、この未曽有の災厄にどう対処するか世界が注視している。ここからが日本の一体感、底力の見せどころだ。

【写真】大会エンブレム撤回を報じた日刊スポーツ紙面

★13年9月7日 国際オリンピック委員会(IOC)総会で20年五輪の東京開催が決定。最終プレゼンテーションで滝川クリステルが「お・も・て・な・し」。安倍首相は福島第1原発の汚染水について「コントロールされている」と説明した。

★13年12月19日 東京都の猪瀬直樹都知事が、5000万円授受問題の責任を取って辞職を表明。東京大会の招致を成功させ「(五輪の)大成功を心から祈念したい」。舛添要一氏が14年2月に新たな都知事に当選した。

★14年1月24日 大会組織委員会が44人体制で発足。会長に就任した森喜朗元首相は会見で「オールジャパン体制を作りたい」と抱負を述べた。

★14年11月19日 計画段階から膨張する大会経費削減のためバスケットボール、バドミントン、セーリングの3競技の会場建設を中止。バスケットボールのさいたまスーパーアリーナでの実施など既存施設に変更し、約2000億円を圧縮した。

★14年12月8日 IOC臨時総会で「五輪アジェンダ2020」が承認され、開催都市の実施種目提案と複数都市での分散開催が認められる。この決定で招致段階のコンパクト開催計画が、後に1都1道8県の広域開催になる。

★15年7月17日 総工費が当初の1625億円から2520億円まで膨張したことの批判を受け、安倍首相がザハ・ハディド氏デザインの新国立競技場建設計画を撤回。同12月に隈研吾氏のデザインが採用。総工費1569億円に抑えた。

★15年9月1日 ベルギーの劇場ロゴに似ていると盗作の疑いが指摘された佐野研二郎氏デザインの大会エンブレムを、発表2カ月で組織委が白紙撤回。あらためて公募し16年4月に野老朝雄氏の「組市松紋」に決定。

★15年10月1日 スポーツ庁が文部科学省の外局として発足した。初代の長官に、日本水泳連盟の会長を務めていた88年ソウル五輪競泳男子100メートル背泳ぎ金メダリストの鈴木大地氏が就任した。

★16年6月21日 政治資金の公私混同疑惑などが問題となった東京都の舛添要一都知事が辞職。五輪開催都市のリーダーが2代続けて「政治とカネ」の問題で退くことに。同7月31日に小池百合子氏が都知事選で圧勝し都知事に就任。

★16年8月3日 IOC総会で開催都市が提案できる追加種目として野球・ソフトボール、空手、スケートボード、スポーツクライミング、サーフィンの採用を承認。野球・ソフトボールは08年北京大会以来3大会ぶりの復帰。他の4競技は初採用となった。

★16年8月21日 リオデジャネイロ五輪の閉会式での次回開催国への五輪旗授受式が行われ、小池百合子都知事が五輪旗を受け取った。その後の紹介セレモニーでは、スーパーマリオに扮(ふん)した安倍首相が、会場の土管から登場する演出が行われた。

★16年9月29日 開催費用を検証する小池百合子都知事肝いりの「都政改革本部」が、ボート・カヌーのスプリント会場「海の森水上競技場」など3会場の建設中止を含め見直しを提案。結局、12月までにコストを削減し当初計画通り新設と決定。

★17年3月17日 IOC理事会で組織委が提案した追加種目の野球・ソフトボールの1次リーグ1試合を、東日本大震災の被災地、福島県の県営あづま球場での開催案を全会一致で承認。いずれも日本戦が想定された。

★17年6月9日 IOC臨時理事会で33競技339種目の実施が正式決定。卓球の混合ダブルス、柔道の混合団体、競泳の混合400メートルメドレーリレー、陸上の混合1600メートルリレーなど複数競技で男女混合種目が追加。

★18年2月28日 大会マスコット最終候補3作品を選出し、全国の小学校各クラス1票による投票の結果、近未来の妖精をイメージした市松模様を取り入れた作品に決定。同7月に五輪が「ミライトワ」、パラリンピックは「ソメイティ」と命名。

★18年9月26日 大会ボランティアの募集を開始。応募総数は20万人を超えた。女性が64%で男性を大きく上回り、外国籍は36%。世代別は20代が36%と最も多かった。組織委は応募者を約8万人に絞り込み、19年10月から研修を開始した。

★19年1月 日本オリンピック委員会(JOC)の竹田恒和会長が五輪招致を巡る不正疑惑でフランス司法当局から収賄容疑で捜査を受けたと判明。6月に任期満了で退任、柔道五輪金メダリスト山下泰裕会長が就任。

★19年4月10日 桜田義孝・五輪パラリンピック担当大臣が辞任。「(オリンピック憲章を)読んでいない」「(池江璃花子の白血病に)日本が本当に期待している選手なので、がっかりしている」など配慮を欠く失言が続いていた。

★19年4月16日 詳細な競技日程を発表。すでに競泳の午前決勝は決まっていたが、バスケットボール男子、陸上9種目などの決勝が午前に組み込まれるなど午前決勝が急増。連日、午前も午後も夜もメダリストが誕生する日程になった。

★19年5月9日 午前10時から五輪観戦チケットの1次抽選申し込みスタート。公式販売サイトにはアクセスが殺到してログインできない状態になり、順番待ちで一時18万人が並ぶなど混乱。その後、追加抽選と2次抽選も順次実施された。

★19年6月1日 東日本大震災の被災地、福島県のJヴィレッジからスタートする聖火リレーのルート概要を発表した。全国1741市町村の約49%となる857自治体を121日間かけて、約1万人のランナーが約200メートルずつを走る。

★19年7月24日 組織委がメダルのデザインを発表。渦を巻く曲線的なデザインが光を集めやすく輝き度合いが高いことが評価。金、銀メダルは夏季五輪史上最重量で556グラム、550グラム。厚さ12・1ミリも史上最大。携帯電話などから採取した「都市鉱山」を再利用。

★19年10月16日 IOCが酷暑のレースを避けるため、マラソンと競歩の札幌移転計画を公表。開催都市の東京都は反発したが、IOCと組織委、都などの協議で11月に2種目の札幌開催が正式決定した。

★19年11月30日 新国立競技場完成。地上5階、地下2階。国産木材をふんだんに使った「杜(もり)のスタジアム」がコンセプト。観客席には視界を遮断する柱がなく一体感が。6万席のシートは5色をランダムに配置し空席が目立たない。

★20年3月12日 世界保健機関(WHO)が新型コロナウイルスの「パンデミック」(世界的大流行)を表明。ギリシャ・オリンピアでの聖火採火式は無観客で開催。3月20日に聖火が日本に到着したが、一般市民は式典に参加できず。

★20年3月24日 新型コロナウイルスの世界的な感染拡大を受けて、安倍首相とIOCバッハ会長の直接電話会談で東京大会延期で一致。その後のIOC臨時理事会で正式承認された。安倍首相は「遅くとも来年夏までに」と明言した。