【五輪の友】1年後の集大成!重量挙げ女子・三宅宏実に期待

引用元:スポーツ報知
【五輪の友】1年後の集大成!重量挙げ女子・三宅宏実に期待

 東京五輪の1年延期が正式に決まった。若手には台頭の余地が生まれ、けがを抱える選手にも回復期間ができる。ただ、やはり浮かぶのは、東京を集大成と思い定めたベテラン勢の心境。本特集面コラムニストで重量挙げ女子の三宅宏実(34)=いちご=も、そんな一人だ。「心で体を支えていた部分も大きく、肉体や精神をあと1年持たせられるかは分かりません」。偽らざる本音だろう。ただ、3大会連続表彰台を目指す彼女の「あと1年」は、期待を持って見守れる理由がある。

 まず、20年目の原点回帰。北京五輪後の09年頃からは、自分で練習メニューを組んできた。熱心さは、常にオーバーワークと隣り合わせになる。昨秋の世界選手権から左脚などを相次いで痛めたことを踏まえ、父で日本協会会長の義行氏(74)にメニュー作りを再び委ねた。00年に競技を始めた時、自宅のリビングで手取り足取り教えてくれた、誰より頼れる存在だ。「自分では(練習を)やりたい、やりたいが強かったけど、父は『今日は、そのへんでやめときなさい』というのも緻密。やっぱりかなわないな」。今年に入ってからは患部の痛みも峠を越し、徐々に練習強度も高められている。

 第二に、気持ちの保ち方のうまさ。最近は料理で気分転換を図っている。延期が決まる前から、だし巻き卵作りを頑張っていたが、その後はカレーライスに挑戦。両親に振る舞い、義行会長も「おいしかったですよ」と明かしてくれた。ホームベーカリーも購入し、今後はパン作りにも取り組む。趣味以外の日常も大切。毎日のお風呂は、数種類のバスソルトを使い分けてリラックスするなど、細やかに気を使う。どんな状況でも練習に打ち込める環境作りが、コロナ禍に揺れる中でも集中できる力の源になる。

 重量挙げの五輪選考も、大会延期のため現時点で先行きは未定。出場権が確定するまで、戦える力を養うしかない。「世界中の方々が、東京五輪は良かったと思えるように心から願っています」。その21年五輪で三宅が集大成の輝きを放てることを、心から願うばかりだ。(細野 友司)

 ◆細野 友司(ほその・ゆうじ)1988年10月25日、千葉・八千代市生まれ。31歳。早大を経て2011年入社。サッカー担当を経て、15年から五輪競技担当。16年リオ五輪、18年平昌五輪を現地取材した。夏季競技は陸上、バドミントン、重量挙げなどを担当し、冬季競技はジャンプをはじめとしたノルディックスキーを担当。 報知新聞社