活動休止の苦境も「ネガティブな気持ちはありません」バドミントン東北マークス・諸多大輔監督インタビュー

引用元:スポーツ報知
活動休止の苦境も「ネガティブな気持ちはありません」バドミントン東北マークス・諸多大輔監督インタビュー

 バドミントン・S/Jリーグ1部の東北マークス(本拠・仙台市)の諸多大輔監督(37)が、新型コロナウイルスの感染拡大の影響でチームが活動休止となる17日より前に取材に応じた。東北マークスは専用の練習場を持っておらず、当面は個別で自主練習を続けていくことになる。その状況の中でも「ネガティブにはなっていない」と語った指揮官の真意とは? (取材・構成=高橋 宏磁)

 東北マークスは新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受け、17日からチームとしての活動を休止。現在は個別で自主練習を続けており、活動再開のめどは立っていない。

 「自主練習にはなりましたが、ネガティブな気持ちはありません。選手がバドミントンへの情熱や思いを、どれだけ持ち続けられるか。それが試されている時期だと考えています。あえて練習メニューは選手には渡していません。やれることが限られている状況の中で、各自がどう考えて何をするのか。自分で考えて実行するのが大人の選手だと思っています」

 諸多監督は青学大を経て2005年、東北マークスに加入。当時からチームには専用の練習場がない。現在は仙台市宮城野区内の施設などを転々としている。11年の東日本大震災発生後は、ラケットを使用した全体練習が約2か月もできなかった。だが同年秋の全日本社会人選手権(愛知)では混合ダブルスで4強入り。その後も含めて現役時代では自己最高の成績を収めた。

 「震災後は2か月、ずっと楽天さんの球場(現楽天生命パーク)の周囲を走っていました。陸上部のような状態でした。当時の高柳(健)監督は5月に秋田県内での全体練習が始まる前に『バドミントンができるありがたさ』を訴えました。練習ができないからといってネガティブにならない気持ち、言うなら『東北魂』は、その時に養われた。バドミントンにかける思いが強ければ、取り戻すことができると思っています」

 東北マークスの所属選手は全員がNTT東日本東北の関連企業の社員として働いている。通常であれば、勤務時間は午前9時から午後5時半まで(現在は基本的には在宅勤務)。練習時間は午後7時前後から約2時間ほどだ。

 「普段、選手は仕事をきっちりとした上で、その余暇の時間で練習をしています。もちろん、仕事が優先なので残業する時もあります。でも選手には『職場から気持ち良く試合に送り出してもらえる選手になろう』と言っています。選手たちが試合に行っている時に、職場の方々がその分の仕事をしてくださっている。支えてくれている従業員の方に、応援されるような選手になろうと。仕事もバドミントンも両方、本気でやっていたら、絶対に皆さんに応援してもらえるチームになると思う」

 現在、指揮官は東日本テルウェルで正社員として働く。だが05年に加入した当初は契約社員だった。

 「入部した時は、現在よりも状況は厳しかった。スポンサーも少なかったので予算も少なくて、大会に出場する際、自費を払うこともあった。それでも、やりがいはありましたね。頑張って仕事をして、その仕事が認められるようになって。スポンサーもつき始めて、今は経費だけで大会に出場できている。応援してくれる人数も増え始めた。そういう方々の期待を裏切りたくないんです」

 当初はバドミントンで結果が出ない場合は、チームを離れることも覚悟していたという。16年に指揮官に就任するまで、様々な分岐点があった。

 「親も将来について心配してくれていたので、3年やってダメだったら奈良に帰ろうかなと思っていました。最初はバドミントンだけをしっかりやろう、という気持ちでしたが、そのうちに仕事が楽しくなってきた。そうしたら、仕事での師匠に正社員にならないかと言っていただいた。その時、師匠に『もしも社員になったら、バドミントンはどうする?』と言われました。僕は『やめます』と答えました。そうしたら『俺が求めている答えは違う。仕事も人様以上にやるし、バドミントンも本気でやると答えて欲しい。君がその模範になれると思っているから、私は社員にしようと思っているんだ』と。その言葉はありがたかったです。だから、今の選手にも両方を本気でやって欲しいんです」

 S/Jリーグは10チームで「S」と「J」の2つのブロックに分かれて実施される。ただ全10チームの全ての選手が、東北マークスの選手のようにフルタイムで働いているわけではない。それぞれ雇用形態や勤務時間は異なる。NTT東日本に所属する日本代表・桃田賢斗のように、基本的に仕事は午前中だけで午後からは練習に集中できる選手もいる。

 「中にはバドミントンだけでご飯を食べている選手もいますが、そこに勝ちたい。そういうチームにこそ、勝ちたいんですよ。私たちは限られた時間の中で、勝てる方法を探していきたい。個人的に監督としての目標は、日本代表選手を育てること。チームとしての目標はS/Jリーグで5位になることですね」

 ◆東北マークス 1972年、電電東北バドミントン部愛好会として発足。89―90年、日本リーグ1部(現S/Jリーグ)に昇格。同1部では2010―11年など5度の5位が最高。01年全日本実業団選手権団体3位。昨季はS/Jリーグ1部で9位。本拠は仙台市。部員8人(コーチ兼任含む)。諸多大輔監督。

 ◆諸多 大輔(もろた・だいすけ)1982年9月27日、奈良県生まれ。37歳。小学校時代に、父・博之さんの影響でバドミントンを始める。大阪・柏原高(現東大阪大柏原高)を経て青学大に進学。青学大卒業後の05年、東北マークスに加入。現役時代は11年の全日本社会人選手権で混合ダブルス4強が最高。16年に監督に就任し、17―18年に日本リーグ2位に入り国内最高峰のS/Jリーグ昇格に導く。169センチ。家族は妻と長男。 報知新聞社