夏のインターハイ中止で高3アスリートの目標、進路どうなる

引用元:産経新聞
夏のインターハイ中止で高3アスリートの目標、進路どうなる

 新型コロナウイルスの感染拡大を受け、今夏に予定されていた全国高校総合体育大会(インターハイ)の中止が決まった。部活動に励んできた高校生の集大成の場であると同時に、特に3年生にとってはアスリートとしての将来も左右する重大な大会。落胆と悔しさ、そして諦念。日本一を目標に練習してきた強豪校の生徒らは、やるせない思いとともに決定を受け入れるほかなかった。(宇山友明)

 ■「地元でV」果たせず

 「悔しい、という思いはあります」。柔道女子の強豪、兵庫・夙川高の桑形萌花主将は、全国高等学校体育連盟が史上初のインターハイ中止を決めた4月26日、率直に本音を吐露した。

 世界選手権2連覇中の阿部詩(日体大)や、2000年シドニー五輪銅メダルの山下まゆみさんらを輩出した同校。阿部詩を擁して団体優勝した一昨年に続く連覇を目指した昨年のインターハイは、準優勝に終わった。全国21府県での分散開催となった今年は柔道の会場が地元・神戸になったこともあり、日本一奪還を目標にチーム一丸となって練習に励んできた。

 だが、コロナ禍が広がるにつれ、雲行きは怪しくなっていった。3月に予定されていた全国高校選手権は2月28日に中止が決定。4月7日には兵庫を含む7都府県を対象に、政府が緊急事態宣言を発令した。中止を知った際は、悔しさとあきらめが入り交じった複雑な気持ちを抱いたという。

 「この経験を乗り越えて、世界で戦えるような選手になっていきたいです」と喪失感を押し殺した。

 ■このまま引退

 高校スポーツ日本一を決めるインターハイは昭和38年以来、半世紀を超える歴史を持つ。夏は陸上、水泳など30競技が実施され、昨年は選手約2万8千人が参加。同世代のライバルと切磋琢磨し、ここから飛躍していったアスリートも少なくない。

 過去には、陸上男子の桐生祥秀(日本生命)が京都・洛南高3年時に短距離3冠を成し遂げた。米プロバスケットボールNBAでもプレーした田臥勇太(宇都宮ブレックス)は秋田・能代工高で3連覇を達成。競泳男子の瀬戸大也(ANA)も埼玉栄高時代、400メートル個人メドレーで3連覇を果たしている。

 それだけに、晴れの舞台が突然なくなった無念さは計り知れない。

 バドミントンで2年連続団体3位の東大阪大柏原高では3月上旬から全体練習を中止し、再開の見通しも立っていない。3年生の大半がこのまま高校でのバドミントン生活に区切りをつけることになり、明石浩和監督は「勝負をすることもなく、高校の部活動が終わってしまう。悔いは残るだろう」と教え子を思いやった。

 ■次の目標は

 インターハイは高校での競技生活の総決算であると同時に、卒業後も競技を続けようとする選手にとっては大学のスポーツ推薦や実業団入りに向けて実績を積む機会でもある。最終学年の3年生にとっては、二重の意味で大きな目標を失ったことになる。

 このため橋本聖子五輪相は中止決定の2日後、3年生が成果を発表できる場や大会を設ける代替策が実現するよう、関係者に努力を要望。萩生田光一文部科学相も感染が収束することを前提として「大臣杯のような大会を各都道府県で行い、その記録を入試で評価してもらうような仕組みもつくっていきたい」と語った。

 ただサッカーやバスケットボールなど、冬季に全国大会が予定されている競技もある。バレーボール男子の強豪、京都・洛南高の木村祐真主将は「インターハイの中止は仕方ないとはいえ、チームの調子が良かったので残念です」としながらも、来年1月の全日本高校選手権に気持ちを切り替え「変わらず努力していきたい」と前を向いた。