【五輪の友】あえて自らを追い込む…バドミントン・西本拳太

引用元:スポーツ報知
【五輪の友】あえて自らを追い込む…バドミントン・西本拳太

 新型コロナ禍で練習環境の激変に苦慮する選手も多い中、あえて自ら環境を変えた選手がいる。バドミントン男子シングルス世界ランク16位の西本拳太(25)=岐阜県協会=は、実業団強豪のトナミ運輸を5月末で退社。岐阜県内に拠点を移した。「トナミ運輸にお世話になり、ここまで来られて感謝している。いばらの道だと思うけど、新たな刺激を求めて、後戻りできずに結果を残すしかない状況に自分を追い込むことが一番と思った」と明かした。

 東京五輪を区切りに、さらなる成長へ、トナミ運輸の恵まれた環境を離れることは決心していた。五輪は1年延期になったが、退社は先延ばしにしなかった。現在は、女子複で世界2位の福島由紀、広田彩花組らが所属する「丸杉Bluvic」で練習。フクヒロペアとも羽根を打ち、汗を流している。仕事はせず、競技に集中。貯金を切り崩す生活だ。「それくらいしないと甘いというか、自分を変えられないかなと。目先のお金にとらわれず(未来の自分に)投資という感じです」と笑った。

 4年前。桃田賢斗(NTT東日本)らの違法賭博問題で、カジノ店への出入りを自ら申告し、代表指定除外を受けた大学生がいた。それが西本だった。当時バドミントン担当ではなかったが、潔さは脳裏に残った。いつも、厳しい道を選んできた。今回も同じだ。「過ちは今でも申し訳ないし、自分の心から消してはダメだと思っている。あの時、結果を残すしかない状況になって、自分でやるしかないというのは肌で感じた。今、もう一段の階段を上るため、自分で何とかするしかない」と腹をくくった。

 五輪の代表選考レースは、大会延期に伴い、来年5月まで期間が延びた。男子単は桃田が出場確実。五輪レースランク17位の西本は、残り1枠を元同僚で12位の常山幹太(トナミ運輸)と争う。ポイント差は6832点。加算対象大会で優勝や準Vを重ねる必要がある。「(五輪への思いは)今まで以上に強い。結果を残せなければ世間からも言われる。いい意味で反骨心に変えたい」。大胆な決断の行方を見守りたい。(細野 友司)

 ◆細野 友司(ほその・ゆうじ)1988年10月25日、千葉・八千代市生まれ。31歳。早大を経て2011年入社。サッカー担当を経て、15年から五輪競技担当。16年リオ五輪、18年平昌五輪を現地取材。夏季競技は陸上、バドミントン、重量挙げなどを担当し、冬季競技はジャンプをはじめとしたノルディックスキーを担当。報知新聞社