瀬戸、練習環境変え刺激 桃田、桐生はプラス思考―東京五輪1年前

引用元:時事通信
瀬戸、練習環境変え刺激 桃田、桐生はプラス思考―東京五輪1年前

 東京五輪の1年延期で、選手たちはかつてない困難に直面している。新型コロナウイルスの感染拡大で以前のような練習環境が整わない中、いかに意欲を保ってトレーニングをしているのか。各競技のエースの近況にスポットを当てた。

 競泳男子の瀬戸大也(ANA)は思い切った決断を下した。延期決定後、小学生の頃から指導を受けていた梅原孝之コーチとの関係を解消。埼玉栄高の同級生、浦瑠一朗氏を新コーチに迎えた。

 昨夏の世界選手権で個人メドレー2種目を制した瀬戸は、本番1年前に五輪代表に決定。今年に入って自己ベストのタイムを出すなど順調だった。「最後の大詰めで五輪延期。違ったアプローチで競技に取り組む方が、2021年に向けて覚悟を持って挑戦していける」。あえて環境を大きく変えることで自分を刺激し、6月から東京都北区の味の素ナショナルトレーニングセンター(NTC)で泳ぎ込みを始めた。

 バドミントン男子シングルス世界ランキング1位の桃田賢斗(NTT東日本)。今年1月に遠征先のマレーシアで交通事故に遭い、右眼窩(がんか)底骨折で手術を受けた。7月開幕に向けて回復に努めていた春先に延期が決定。その後の調整について「動揺した部分はあったが、取り組む姿勢は変わらずに頑張ってこられた」。視力はほぼ戻り、所属先で順調にトレーニングを重ねている。「少しでも自分の短所を消せるように練習できている。もっと高められる」。あと1年を有効に使おうとプラス思考だ。

 陸上男子短距離の桐生祥秀(日本生命)は、政府の緊急事態宣言が解けてからトラックで本格的な練習を再開。当初は足裏に疲労が残るなど、練習環境が制限されていた影響を感じたという。昨秋の世界選手権を最後に試合から遠ざかる不安も。レースに復帰する8月以降に向け「試合勘が少し薄れてきていると思うので取り戻したい。日本記録を狙っていきたい」と高い目標を掲げる。

 ◇慎重な柔道、レスリング

 肉体的な接触が多い競技は、練習再開に慎重だ。柔道は現時点で強化合宿の予定が立たない。リオデジャネイロ五輪男子73キロ級金メダルの大野将平(旭化成)は、母校の天理大などで地道に基礎トレーニングを積み、実戦の稽古ができる日を待っている。

 レスリングは7月からNTCで人数を制限して代表合宿を始めた。スパーリングなど対人練習はもっと先になりそうだが、五輪連覇を狙う女子57キロ級の川井梨紗子(ジャパンビバレッジ)は「レスリングの感覚は変わらないし、技術も死なない。細かい部分を詰めていく」と意気込んでいる。