強化拠点で「感染1号出したくない」 コロナ再拡大で東京合宿中止相次ぐ

引用元:毎日新聞
強化拠点で「感染1号出したくない」 コロナ再拡大で東京合宿中止相次ぐ

 来夏に延期された東京オリンピックの開幕まで23日で1年となったものの、各競技団体の代表チーム合宿が軒並み中止に追い込まれている。一度は再始動したが、新型コロナウイルスの感染者数増の余波を受けた。強化拠点の味の素ナショナルトレーニングセンター(NTC)がある東京都では感染者数が200人を超える日もあり、地方から不安視する声も上がる。感染対策と強化のはざまで葛藤する関係者の胸の内は。

 「他の社員も東京出張をしていない。社長も所属選手を東京に行かせるなと言っている」。地方を拠点とする代表選手の所属チームからそう指摘され、ある競技団体の幹部はNTCで行う予定だった代表合宿の中止を決めざるをえなかった。幹部は「最高の環境のNTCで徐々に代表活動を進めていきたいが、所属企業にそう言われてしまえば厳しい」と話す。

 NTCは各競技の専用練習場があり、宿泊や食事、医科学サポートを一体的に受けられる施設として2008年1月に開所した。先立つ01年10月に整備された隣接する国立スポーツ科学センター(JISS)とともに各競技の代表チームの強化拠点となり、メダル獲得に貢献してきた。

 新型コロナの感染拡大に伴い、4月8日から1カ月半ほど使用停止されたが、緊急事態宣言の解除後、5月28日から再稼働した。人数や練習内容の制限はあるが、徐々に利用も増え、7月上旬には12競技団体の1日当たり150人前後が活用していた。

 ところが、である。東京を中心とした感染再拡大を受け、7月20日から、重量挙げやレスリング、バドミントンが相次いで7~8月に予定していたNTCでの代表合宿中止を発表。日本ウエイトリフティング協会は「選手から参加に不安な声があった」として東京以外での合宿を検討しているという。

 また、ボクシングも7月下旬の合宿の場所をNTCから男子は山形、女子は富山に変更した。NTCを利用した選手の感染者はゼロだが、日本ボクシング連盟幹部は「他の競技団体に迷惑を掛けることになるため、NTC感染1号を出したくない」と本音をこぼした。

 ある施設関係者はNTC側の課題も指摘する。「感染者が出た場合の詳細な対応は決まっていないし、検査をどうするかは各競技団体任せで統一していない。競技団体側が不安に感じてもおかしくない」。新型コロナで揺れる東京五輪の開催可否同様、強化活動の今後も不透明な状況が続いている。【小林悠太、倉沢仁志】