栗原恵さんが直撃…柔道カナダ代表の出口クリスタ、長野初の金メダル持って凱旋したい

引用元:スポーツ報知
栗原恵さんが直撃…柔道カナダ代表の出口クリスタ、長野初の金メダル持って凱旋したい

 スポーツ報知「TOKYO 2020」の新企画がスタート! 元バレーボール女子日本代表で、スポーツコメンテーターの栗原恵さん(36)が女性アスリート専用のトークルームを開設。「MEG’S ROOM Lady go!」と題して、隔月連載で来夏の東京五輪に向かう女子選手たちと対談を行います。第1回のゲストは、柔道女子57キロ級の2019年世界女王で、カナダ代表の出口クリスタ(24)=日本生命=。カナダ柔道史で初の金メダルが期待される“やまとなでしこ”の素顔に迫った。(構成 小河原俊哉、遠藤洋之、カメラ・小泉洋樹)

【写真】栗原恵さんが描いたクリスタの似顔絵

 栗原(以下、栗)「自粛生活は、どのように過ごされていましたか?」

 出口(以下、出)「カナダ・ケベックにいるトレーナーから送られてくるメニューをこなす生活を2か月ほど過ごし、6月から柔道の練習を少しずつしています」

 栗「自粛期間中にいろいろと感じられたと思います」

 出「こんなに柔道から離れたのは初めてで。今年(10月)で25歳。22年間、柔道自体が自分の生活になっていたし、どう時間を潰せばいいか分からなくて。相当、依存していたんだなと思います」

 栗「そう思えるのは、やはり柔道が大好きだから?」

 出「嫌いだったはずなんですけどねぇ(笑い)。コロナのお陰で気づかされた部分があります」

 栗「モチベーションの維持が難しいですか? 私だったら感じてしまいます」

 出「延期が決まる前にカナダが(五輪不参加の)声明を出したんですけど、覚悟していました。仮に1年延期されたからといって、もう1年、準備する期間が増えたとしか思っていないですね」

 栗「すごいポジティブです」

 出「ポジティブでずっとやってきたので、自分らしく1年後も頑張りたいです」

 栗「生まれも育ちも日本ですが、お父さまのご出身のカナダを代表にされました」

 出「周囲に背中を押されたのもありましたけど、最後は自転車に乗りながら決めちゃって。でも(カナダを選んだ後)最初は勝てなくて、日本の大会でも1回戦負け。日本チームも同じアップ会場にいて自分で勝手に重圧かけて。でも、みんな応援してくれる。本当に恵まれてます」

 栗「決断を振り返ると?」

 出「今のところ人生で一番大きな決断でしたし、勝とうが負けようが後悔しないと決めてました。結果、こう(19年世界選手権でカナダ初の金メダル)なってますけど、結果が出てなくても後悔はしてません」

 栗「日本の心も忘れず、カナダの良さも取り入れる、パイオニア的存在! 同じ環境の方々に伝えたいことは?」

 出「五輪もあるし、外国の人も日本に来る機会が増えて、自分のようにいろいろなルーツのある子供たちも増える。日本人の心を持ちながら他の国の代表を選ぶことも正解だし、日本人として生きるのも正解だと思う。ルーツがあれば何でも正解だと思うので自信を持って選択してほしい」

 栗「すごい! たくさんの人が励まされると思います。自分を持って貫いている姿勢は必ず響くと思います。とことん貫いてほしいと改めて感じました」

 栗「おしゃれについて。出口さんはブラックのコーデが多いですよね。こだわりは?」

 出「こだわり…ですか。いかに体を小さく見せるか、ですか!?(笑い)」

 栗「黒はスリムに見せる効果がありますしね」

 出「(前のめりで)そうなんですよぉ! 白は膨張色だし。気づくと黒を手に試着室に行っています!」

 栗「すごく似合いますよ~」

 出「何かおしゃれのアドバイス、ありますか?」

 栗「すごく顔立ちがきれいだし、色が白いのでパステルカラーでも原色でも似合うと思います!」

 出「けんかしないスかね(汗)。チャレンジします」

 栗「私は現役中はネイルができなくて。出口さんと一緒で髪もショートでした。おしゃれするなら、どこをしたいですか?」

 出「髪の色ですね。金髪にしてみたいし、ブリーチも何回もしたい。原色入れたりとか。柔道はそういうのは良くないとされているので、そこ、はっちゃけたいです(笑い)」

 栗「髪形、すてきです」

 出「これは…寝起きでして(汗)。髪も勝手に分かれて(ちびまる子ちゃんの)花輪くんみたいになります」

 栗「チャームポイントは瞳ですか?」

 出「うーん、唇かな。分厚いので(笑い)」

 栗「セクシーですよね」

 出「あはは(照れ笑い)」

 栗「飼い猫はツナ、マヨちゃんですよね。私も保護猫2匹(縁=えん、紬=つむぎ)飼ってます。どんな存在ですか?」

 出「もう、家族ですね。子供みたいな。ペット飼うと婚期遅れるの分かる(苦笑い)。周りの同級生はお母さんになってるけど、私は2匹いるので十分幸せ」

 栗「共感できる~ 支えですよねぇ」

 出「需要と供給。えさ代稼ぐ代わりに、かわいさ供給してもらってます。ゆくゆくは(モデルの)森泉さんの家みたいな、動物王国を作りたいです(笑い)」

 栗「超攻撃型な柔道を動物にたとえると、やはり?」

 出「猫科かな(笑い)。ライオンの雄。狩りをする雌と違い、スピードでスキを突く。私って体力ないので、似てるかな」

 栗「猫ちゃんを肩に乗せたナウシカ風のインスタグラム、拝見しました。さすが、肩が強いなと」

 出「(栗原さんと自分を比べ)バレーボール選手はほんと、ナイスバディーで…。私の得意技は大外刈りなので肩をすごく使う。だから胸筋、肩はけっこうリッパ(ドヤ顔)。我ながら」

 栗「他のスポーツに転向できるとしたら」

 出「モテていただろうなという競技はやりたかったなぁ。スピードスケート、レスリング、カナダ人の父が好きなアイスホッケーも」

 栗「イメージできる!」

 出「氷上の格闘技なのでガンガンいけます(笑い)」

 栗「『夢だったものが目標になった』という五輪の目標を教えてください」

 出「来年開催されるならもちろん金を狙っていきますし、カナダ柔道初の金メダルを持ち帰りたい【注】。これも言わせてください! 長野初、塩尻初の金メダルを持って帰って凱旋したい。カナダの柔道の知名度も上げたいですね」

 栗「そこに至るまでには」

 出「コロナでブランクが空いたので以前の自分、体力を戻す。1年の猶予をもらったので、今年できなかった新しい技を来年までに完成させたいです」

 栗「五輪の延期を『猶予をもらった』と言えるのがすごい。その時点で強いし勝っていると思います。SNSを拝見しても、非常に明るくて、実は面白い方なのかなと感じたのですけど、その通りでした!」

 出「思っていただけましたか」

 栗「落ち着いたら直接、お会いしたいです」

 出「今度はバレーを教えてください!」

 栗「けがをしない程度にやりましょう(笑い)」

 出「『ハイキュー!』(バレーボールの人気アニメ)を見て勉強しているのでぜひお願いします!」

 【注】柔道カナダ代表の五輪メダルは男子の5つ(銀2、銅3)のみ。銀は、正式競技となった1964年東京大会重量級決勝で猪熊功に敗れたダグ・ロジャース、2000年シドニー大会男子100キロ級決勝で井上康生に敗れたニコラス・ギル。女子の五輪でのメダル獲得はない。

 ◆栗原 恵(くりはら・めぐみ)1984年7月31日、広島・能美町(現・江田島市)生まれ。36歳。小学4年からバレーボールを始め、山口・三田尻女(現・誠英)高で全国大会4冠を達成し、同3年時の2002年に日本代表デビュー。04年アテネ、08年北京と2度の五輪に出場し、ともに5位。10年世界選手権で銅メダル。19年6月に現役を引退。187センチ。月刊バレーボールでコラムを連載中。

 ◆出口 クリスタ(でぐち・くりすた)1995年10月29日、長野・塩尻市生まれ。24歳。父はカナダ人、母は日本人。3歳で柔道を始め、松商学園高1年時に全国高校総体女子52キロ級優勝。日本代表として出場した世界ジュニアは2013年女子57キロ級銅、14年同銀。山梨学院大3年の17年1月にカナダ代表を選択。同国代表として18年世界選手権同3位、19年に同初優勝。現在の世界ランクは1位。右組み。160センチ。妹のケリーも柔道選手。

 ▼実施日時 8月19日午後2時

 ▼対談方法 新型コロナ禍のためリモートで実施(栗原さん=東京都内、出口=山梨県内の自宅)

 ▼企画 LDH SPORTS

 ▼取材協力 LDH JAPAN、日本生命、山梨学院大

 ▼撮影協力 横田早紀さん(ヘア&メイク)

 ◆長野県出身の五輪メダル

 夏季5、冬季6の計11人。夏季大会は64年東京の“東洋の魔女”バレーボール女子で渋木綾乃が金を獲得したが、個人では16年リオの奥原希望(バドミントン女子単)、荒井広宙(陸上男子50キロ競歩)の銅が最高。金メダルは18年冬季平昌大会スピードスケートで、女子500メートルの小平奈緒、団体追い抜きの菊池彩花、92年アルベールビル、94年リレハンメルのスキー複合団体の河野孝典の3人。

 ◆「めっちゃうまい」肖像画

 栗原さんから出口に対談のお礼にと、自筆デジタルアートの肖像画がプレゼントされた。「今日を迎えるまでに映像を見たりして、純粋に応援したい、いちファンになりました」と栗原さん。出口も「めっちゃ、うまいじゃないですか!」と感激した。元々、絵を描くことが好きな栗原さんは、4月から自身のインスタグラムでパンダや犬など多数の「MEG ART」を掲載。この企画タイトルも栗原さんが手掛けた。

 ◆対談後記

 女性アスリートを取材させてもらえることになり、私たちが普段目にする凜(りん)とした姿で戦う姿の裏にある努力や思い、そして女性らしさを伝えさせてもらいたいと思いました。私自身が経験したからこそ感じられる部分、そして、いちファンとして知りたいこと。両面から迫って皆さんにお伝えしていきたいと思います。

 出口選手は明るく笑顔で質問に答えてくれる姿が印象的ですが、柔道の話題になるとキリッと引き締まる表情でした。言葉一つ一つからはもちろん、その表情から彼女が真摯(しんし)に競技と向き合う姿勢が伝わります。カナダ代表を選択するまで、そしてその後の輝かしい快進撃の裏にはたくさんの葛藤があったこと。日本の心、そしてカナダで感じた良き文化を融合させられる彼女こそ今後のスポーツ界におけるパイオニア的存在になるのだと感じました。

 苦境こそ前向きに捉え、思いを伝えてくれる姿に心から応援したくなりました。

 メイクのお話ではご自身がチャームポイントだと話してくれた唇にブラウンリップを塗るのがお好きだとか。今回はリモートでの対談となりましたが、オススメやお気に入りのコスメなどガールズトークができる日を楽しみにしています。(栗原 恵)報知新聞社