「後ろ向きに漕ぐから見えない世界にいける」 “ボートの鉄人”が高校生に贈るエール

引用元:THE ANSWER
「後ろ向きに漕ぐから見えない世界にいける」 “ボートの鉄人”が高校生に贈るエール

「インハイ.tv」と全国高体連が明日へのエールプロジェクト」の一環として展開する「オンラインエール授業」。21日はオリンピック5大会連続出場の経歴を持つ、ボートの武田大作が登場。インターハイが中止となった全国のボート部員に向け、オンライン授業を行った。

 この「オンラインエール授業」は、インターハイ実施30競技の部活動に励む高校生とトップアスリートらが、「いまとこれから」をオンラインで話し合う企画。これまで、ボクシングの村田諒太、バドミントンの福島由紀と廣田彩花、卓球の水谷隼、サッカーの仲川輝人、佐々木則夫さんらが講師を務め、高校生たちが今、抱く想い、悩みに寄り添いながら、未来に向かって激励してきた。

 第24回の講師は、46歳の今も地元・瀬戸内海を拠点に競技を続ける「ボートの鉄人」武田大作。日本代表として96年アトランタ大会から5大会連続でオリンピックに出場し、シドニー、アテネでは6位入賞。2000年には、軽量級クォドルプル(4人乗り)で、日本ボート界初の世界選手権優勝を飾った。

 武田がボートを始めたのは高校入学後。「アウトドアスポーツを始めたかった」という彼は「海か山か」の選択で迷った。

「僕は山育ち。海に行きたかったので、高校のボート部が瀬戸内海で活動することを知り、ボートか登山かで悩みました。部活の初日にボートに乗ったとき、『あ、この競技は面白い』と感じた。その瞬間、この競技をやろう、と思いました」

 しかし、当時の武田は小柄で痩せっぽち。身長164センチ、体重42キロの体では、ボートを漕ぐことさえできなかったという。

「1年のときの目標は補欠からの脱却。『コックス(舵手)にならないか?』と言われたが、漕手になりたかったので、イヤだイヤだ、とゴネ続けました。

 練習自体は苦痛でしたが、とにかくボートが好きだった。顧問の先生やコーチのOBの方に常々言われたのは『人からの指示ではなく、自分で動け』ということ。顧問はボートの専門家ではなかったが、『好きで選んだんだから、必死にやるのは当然じゃない?』という感じだった。先生もOBもすごくよかったので、僕は恵まれていました」

 好きなことを、好きなだけ、思いのままに没頭する。その熱量で腕を磨き、2年生で漕手に、3年時には「全国で戦う」という目標を達成。男子シングルスカルでインターハイ5位の成績を残し、本格的に「想定外」(武田)の長い、長い、競技人生のスタートを切った。次ページは:質疑応答で交流「スポーツの楽しさは成功することがすべてではない」

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