五輪ボイコットを経験した父の言葉 フェンシング千田健太が高校生に伝えたエール

引用元:THE ANSWER
五輪ボイコットを経験した父の言葉 フェンシング千田健太が高校生に伝えたエール

 フェンシング元日本代表の千田健太さんが、8月21日に配信された「オンラインエール授業」に登場。「インハイ.tv」と全国高体連が「明日へのエールプロジェクト」の一環として展開する企画に登場した千田さんは、インターハイ中止という経験から前を向く全国のフェンシング部に向けて、経験の大切さと次に生きる思考について説いた。

 この「オンラインエール授業」は、インターハイ実施30競技の部活動に励む高校生とトップアスリートらが、「いまとこれから」をオンラインで話し合う企画。これまで、ボクシングの村田諒太、バドミントンの福島由紀と廣田彩花、卓球の水谷隼、サッカーの仲川輝人、佐々木則夫さんらが講師を務め、高校生たちが今、抱く想い、悩みに寄り添いながら、未来に向かって激励してきた。

 第25回の講師は、元フェンシング男子日本代表の千田健太さん。2006年にワールドカップ東京大会で個人銅メダル獲得後、数々の世界大会で活躍。2008年北京大会、2012年ロンドン大会とオリンピックは2大会連続出場を果たし、ロンドン大会では男子フルーレ団体で銀メダルを獲得した。現役は2016年に引退した。授業は、千田さんとフェンシングとの出会いを振り返るところから始まった。

 千田さんがフェンシングを始めたのは、中学1年の冬。それまでの夢は「サッカー選手」だったという。

「サッカーが好きだったが、なかなかうまくならない。何か新しいことに挑戦したいと思ったときに、たまたまフェンシングを見て、軽い気持ちで始めました」

「社交的な性格ではなく、人と話すのが苦手。街に出て遊んだ記憶もない」という気仙沼高(宮城)時代。フェンシングの練習に没頭し、毎日が自宅と学校の往復だった。当時の目標はインターハイ優勝。しかし、今振り返ると「優勝」を目指すことよりも、プレーする楽しさが勝っていたと話す。

「高校時代は、とにかくフェンシングが楽しかったし、面白かった。世界で戦う選手の映像を見ては、『カッコいいな』と思う技をチェック。居残り練習をしたり、帰宅後も剣を握ったりと、技ができるまで何回も繰り返し練習していた。優勝を目指すよりは、練習をやっていくなかで、技が上達していく楽しさが先行していたと思う。暇さえあれば、剣を握っていました」

 ここで、試合で剣を交える2人の選手の写真が、画面に映し出された。写真は千田さんが高3時に出場したインターハイ、団体戦決勝のワンシーン。一人は千田さん、そしてもう一人は平安高(京都)にいた太田雄貴さん(現日本フェンシング協会会長)だ。

「この試合は確か、両校3勝3敗で迎えた第7試合目。僕が4対4からの一本勝負で負けてしまった。運命を感じますね」

 当時、すでにスター選手だった太田さんとの試合に負け、その悔しさから大学でもフェンシングを続けることを決めた、という千田さん。2人が後に日本代表のチームメートとなり、2012年ロンドン大会で銀メダルを獲得することを考えると、まさに運命の一戦といえる。次ページは:自分に自信がない高校生へ「不安になるのは勝ちたいから」

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