男子新体操、決勝は生配信で 日本発祥、普及のチャンス

男子新体操、決勝は生配信で 日本発祥、普及のチャンス

 日本発祥と言われる男子新体操で、初の試みとなるオンラインでの大会の決勝が12、13日に行われる。新型コロナウイルスの影響で中止になった高校総体などに代わる大会。日本体操協会が主催する男子新体操の大会で、無料ライブ配信するのは初めて。関係者は「海外の人を含め、多くの人に見てもらうチャンス」と期待する。

【写真】チームメートの練習風景をタブレットで撮影する埼玉栄高校の男子新体操部員=2020年9月9日午後6時23分、さいたま市、諫山卓弥撮影

 「男子新体操オンライン選手権2020」は、中学生以下のジュニアの部と高校生の部で構成され、1チーム6人がフロアマットの上で演技する団体で争う。予選は8月、各校が自分たちで約3分間の演技を撮影し、映像を主催者に送る形で行われた。高校の部では20校が決勝に勝ち残った(うち1校は決勝を辞退)。決勝は録画映像ではなく、日本体操協会から委託されたスタッフが各校を訪れて生配信。その映像を見て審判が審査する一発勝負となる。

 9日、本番に向けて準備する埼玉栄高の練習を訪ねた。6人のメンバーが息をそろえてバク転をしたり、曲に合わせて踊ったり。主将の岩崎光(3年)は「普段の大会だと目の前に審判がいるけど、今回はカメラがあるだけ。試合って感じがあまりしない」と苦笑いしながら備える。休校で6月下旬まで約3カ月、まともに練習できず、ここへきてようやく本来の動きが戻ってきたという。

 予選は不本意だった。普段の練習場では13メートル四方のフロア全体を画角に入れて撮るスペースがなく、同校の柔道場を借りて撮影したという。「柔道場の畳の上では踏ん張りがきかず、ケガも怖かった」と岩崎。簡単な演技構成しかできず、撮り直しも1回しかしなかった。19位での予選通過だった。

 決勝は新体操部の隣で練習するバドミントン部のスペースにカメラを置かせてもらい、普段のマットの上で演技できそう。岩崎は「みんなで楽しく、思い切ってやりたい」と下克上を狙う。

 開催の1番の目的は、大会がなくなった選手たちに発表の機会を持ってもらうことだが、もうひとつの狙いがある。1946年の国体でデモンストレーションとして行われ、日本が発祥とされる男子新体操の競技人口は国内で約1500人。女子の約1万1千人を大きく下回る。海外では米国など一部の国でも行われているだけで、世界選手権もない。日本体操協会の山田小太郎・男子新体操委員長は「普段、目につく機会が少ない男子新体操を知ってもらう機会になれば」と話す。

 「6人の一糸乱れぬ呼吸や、男子ならではのダイナミックさなど、無限の可能性を秘めた競技」と埼玉栄の石田渓監督(38)といえば、高校から新体操を始めたという副主将の木部颯介(3年)も「曲に合わせて踊る。見ていて楽しめる要素が多いです」。2008年を最後に国体の競技からも外れていたが、今後の国体で復活する予定もあり、普及への期待も膨らむ。

 大会は、12日午後4時半から中学以下のジュニアの部、13日午後1時から高校の部が行われる。「自宅で見ることができ、手軽に楽しめます。知名度アップにつながればと思っています」と山田委員長。大会ホームページから見られる。(https://www.live-link.life/online/mrgonline2020)(山口史朗、金島淑華)朝日新聞社