日本が「金」予測で世界3位返り咲き…2位中国はアメリカに肉薄

 開幕まで半年を切った東京オリンピックで、日本が獲得する金メダル数はリオデジャネイロオリンピックの12から30に伸長するという予測が出ました。アメリカのデータ分析会社「グレースノート」が先月24日に発表したものです。これまでの日本の1大会あたりの最多は16だけに、倍増するとみられているのです。(読売新聞オンライン 斎藤明徳)

■歴史は繰り返す?

 2016年のリオデジャネイロ大会や18年の平昌冬季大会などでも、グレースノート社の予測はたびたびニュースとなっています。東京オリンピックでも、主要な競技大会の結果を基に開幕1年以上前から予測を随時、発表してきています。

 先月24日付のメダル獲得予想によると、金メダル数の1位はアメリカの47、2位は中国の43で、日本の30個は3位に相当する好成績です。

 3位は冬季大会も含めた日本の最高順位で、過去に2度経験しています。まずは歴代最多の16個を獲得した1964年東京大会、そして68年メキシコ大会です。後者では柔道が実施されず、数は5減の11となりましたが、当時の国・地域別では3位をキープしました(両大会とも1位アメリカ、2位は旧ソ連)。2004年のアテネ大会も最多に並ぶ16個でしたが、この時は5位でした。

 メキシコ大会については、現在のドイツベースでとらえて東ドイツ9個と西ドイツ5個を合算、日本を4位とする考え方もあるかもしれません。いずれにせよ3位となれば半世紀以上を経ての復帰となります。

■ホームアドバンテージ

 実際、前回の東京オリンピック以前の日本の最多金メダルは7個(1932年ロサンゼルス大会)でしたから、地元開催で倍増させた計算です。

 国際オリンピック委員会(IOC)ホームページの国・地域別のページにはメダル獲得状況が紹介されていますが、そこで目を引く金メダル量産は1904年セントルイス大会でのアメリカ79個、続くロンドン大会でのイギリス56個、そして80年モスクワ大会での旧ソ連80個でしょうか。いずれも地元開催です。

 開催国の躍進は近年でも珍しくありません。92年のバルセロナ大会では、直前のソウル大会で金1個だったスペインが実に13個獲得しました。2008年の北京大会では中国が51個(大会終了時)を獲得。直前のアテネ大会の32個(2位)から大幅に上積みしてアメリカから首位を奪取しました。イギリスも北京大会の19個(4位)から12年ロンドン大会では29個(3位)に伸ばしました。国や競技団体が強化に力を入れることに加え、地の利や地元開催による熱気などが選手を後押しするのでしょう。

 一方、1976年モントリオール大会で金ゼロの憂き目にあったのがカナダです。ただ、それが発奮材料になったのか、モスクワ大会のボイコットを経て臨んだ84年ロサンゼルス大会では日本と同じ10個と存在感を見せました。

■56年前に躍動したのは…

 前回東京大会の日本の金メダル16個のうち10個を稼ぎだしたのが、レスリング(当時は男子のみ)と体操です。体操の男子は52年ヘルシンキ大会で日本体操界初のメダルを含む銀・銅計4個を獲得すると、56年メルボルン大会で11個(うち金1)、60年ローマ大会で9個(金4)とメダルを量産。東京大会でも団体総合を連覇し、遠藤幸雄氏が日本人初の個人総合優勝を果たすなど金5個を獲得する充実ぶりでした。

 一方、奮起したのはレスリングです。日本勢の戦後初の金メダルを含め52、56年大会で計5個(金3、銀2)を獲得しましたが、60年大会では銀1個にとどまり、同年9月9日付の読売新聞朝刊には、頭を丸めた日本レスリング協会の八田一朗会長や選手らの写真がローマ発の記事で掲載されています。「これでさっぱりしました。新規まきなおしですよ」のコーチ談話通り、東京大会では見事、金5、銅1と結果を出しました。

 また、ともにオリンピックでは初採用だった柔道(男子のみ)とバレーボールも日本のメダル量産に貢献しました。前者が金3、銀1を、後者は「東洋の魔女」が金、男子が銅を獲得しています。

■新種目の「追い風」予測

 得意分野で量産し、新顔で上積みする好循環は今度の東京大会でも実現したいところです。グレースノート社は日本の金メダル予測30個のうち、前回のリオ大会にはなかった新種目や復活する種目で9個を想定しています。新規や復活種目でのメダル獲得予測はアメリカが総数20個で最多ですが、金に限れば6個のアメリカやオーストラリアを抑えて日本がトップになるとしています。

 地元開催のオリンピックは、新採用の競技にとって格好のPRになります。その一つである空手では、主力選手5人が昨年12月に読売新聞東京本社を訪問し、その際の動画が読売新聞オンラインに掲載されています。東京大会出場を確実にしている女子形の清水希容選手は「しっかりと金メダルを取って、大きな紙面で掲載してもらえるよう頑張ります」と活躍を誓っています。

■アメリカ対中国

 グレースノート社の最新予測で目を引くのは中国の巻き返しです。

 1952年のヘルシンキ大会参加後、オリンピックから遠ざかっていた中国は、夏季大会については84年ロサンゼルス大会から復帰しました。前述通り2008年北京大会で金メダル数が1位になりましたが、その後の2大会では2位(38個)、3位(26個)と順位を下げています。ただ、グレースノート社は東京大会での2位浮上を予測、その数も昨年5月時点の35個から最新で43個へ急上昇しています。12あったアメリカとの差が4にまで詰まってきており、スポーツ界での覇権争いも激しさを増しています。

 一方、今年に入ってから予想外の事態も起こっています。バドミントン男子シングルスの桃田賢斗選手は、1月13日に遠征先のマレーシアで交通事故に巻き込まれ負傷。再始動した今月、右目の眼窩底(がんかてい)骨折が判明し手術を受けています。また、新型コロナウイルスの感染が中国湖北省武漢市を中心に世界的な拡大を見せるなか、大会の中止や延期、変更が相次ぎ、スポーツ界にも影響が及んでいます。

 メダル予測を難しくさせる要素でしょうし、選手や関係者にとっては、これまで以上に細心の注意やコンディション調整が求められる大会になるかもしれません。戦いは既に始まっています。