ダブルスは意思疎通の表現 バドミントン

引用元:時事通信
ダブルスは意思疎通の表現 バドミントン

 2012年ロンドン五輪のバドミントン女子ダブルスで銀メダルを獲得した藤井瑞希さん(31)と垣岩令佳さん(30)=ともに現役引退=が、初めての技術書となる「バドミントンダブルス必勝テクニック」(実業之日本社)を監修した。バドミントンの日本勢で史上初の五輪メダリストになった「フジカキ」。世界と戦う上で重視してきたポイントや、佳境を迎える東京五輪の女子ダブルス代表選考レースについて、藤井さんに聞いた。

〔写真特集〕ロンドン五輪バドミントン

 ダブルスは「温度を同じにしたり、目標に対するアプローチのスピードを合わせたりするところが難しい」と実感する藤井さんだけに、監修した「必勝テクニック」では技術や戦術以外にコミュニケーションの苦労や二人の葛藤にもページを割いている。熊本県出身の藤井さんと滋賀県出身の垣岩さんは、バドミントンの強豪として知られる青森山田高に進み、1学年差の先輩、後輩の関係に。藤井さんは二人が組んだダブルスで、コミュニケーションを大切にしてきた。「それがうまくいかなかったら成長できなかったかなと思います。個々のスキルはそんなに高くなくても、組んだ時に力が発揮できました」

 ただ実際は、垣岩さんが年上の藤井さんに対して意見を言うことは少なく、もっぱら言われた通りにしていた。本格的なロンドン五輪代表争いが迫ったある日、意を決した藤井さんは宿舎で垣岩さんと膝を突き合わせる。「私の思いはこう。令佳はどう思う?」。答えを待つこと約3時間。垣岩さんがようやく思いを口にした。「もっとバックを狙っていきますね」「先輩、そこを張ってもらえますか」「このタイミングで出ますね」

 二人の距離が縮まった。何でも言い合える関係になると、意思疎通がプレーに表れ、成績が上昇していった。藤井さんは「3年ぐらいかかりました。私に乗っかってきてくれる感じのダブルスだったのが、二人でやっている感覚になってうれしかった。背負っているものがちょっと楽になった」と振り返る。