五輪開幕まで150日、早期代表決定組の次なる戦いは「シード権争い」

引用元:産経新聞

 東京五輪の開幕まで、25日で150日となった。各競技で五輪代表レースが繰り広げられる中、早々に代表入りを確実とした有力選手は本番を見据え、次なる戦いに挑んでいる。五輪のシード権争いだ。上位シードに入れば、他国の強豪と序盤で対戦することを避けられる。五輪への切符はゴールではなく、メダル獲得へ向けて少しでも優位に立つための戦いは続く。

 ニューデリーで23日まで行われたレスリングのアジア選手権。昨年9月の世界選手権優勝で五輪代表を決めた男子グレコローマンスタイル60キロ級の文田健一郎(24)=ミキハウス=は大会2日目の19日に優勝し、五輪の第1シードを確実にした。

 五輪のレスリングには各階級16人が出場。第1~第4シードは6月にポーランドで開かれる大会までに獲得したポイントで決まる、世界レスリング連合のランキング順となる。第1、第2シードの選手はトーナメントで別のブロックに入り、決勝まで当たることはない。文田は「第1シードで五輪に出られるのはすごく名誉なこと。それだけ責任を感じるし、いい重圧にもなるんじゃないか」と笑顔を見せた。

 1月の世界ランクで決まる卓球のシングルス代表争いを僅差で制した石川佳(か)純(すみ)(27)=全農=は、その後も順位を上げるべく国際大会を慌ただしく転戦している。11日に故郷の山口で行われたTリーグの試合を終えると、その夜には羽田空港からポルトガルに飛び立った。リスボンで行われた国際大会で優勝した後も帰国することなくブダペストへ。ワールドツアーのハンガリー・オープンに出場し、準決勝まで進んだ。

 次の目標は五輪での第4シード。現在、石川は世界9位だが、五輪シングルスには各国2人までしか出場できないため、層が厚い中国勢の3番手以下を除けば4位との差は僅かしかない。「第4シードになれば準決勝まで中国人選手と当たらない。メダルに向けて有利になる」と意気込む。

 柔道で唯一、五輪代表を決めている女子78キロ超級の素(そ)根(ね)輝(あきら)(19)=環太平洋大=も、五輪3大会連続表彰台の世界1位、イダリス・オルティス(30)=キューバ=との対戦を決勝まで避けようと、今後、国際大会への出場が検討されているという。

 シード権で気になるのは、今年1月に遠征先のマレーシアで交通事故に巻き込まれ、右目に眼(がん)窩(か)底(てい)骨折を負ったバドミントン男子シングルスの桃田賢斗(25)=NTT東日本=の動向だ。世界1位を独走し、昨年12月に代表入りを確実にした桃田のポイントは現在、11万1918点。2位に3万点以上の大差をつけているが、このまま欠場が長引けばシード権が決まる7月7日付のランキングでは逆転される可能性も残されてはいる。

 ただ、シード権を気にしすぎる必要はないとの見方もある。これまで五輪と世界選手権を合わせ世界を4度制したレスリング女子57キロ級代表の川井梨紗子(25)=ジャパンビバレッジ=は、21日のアジア選手権優勝で世界1位に返り咲いた。それでも「第1シードに越したことはないけど、あまり意識してはいない」と泰然と言い切った。(岡野祐己)