桃田賢斗、ファンに恩返しの東京五輪金メダル宣言

引用元:日刊スポーツ
桃田賢斗、ファンに恩返しの東京五輪金メダル宣言

苦難を乗り越え金メダルを勝ち取る-。バドミントン男子シングルス世界ランキング1位の桃田賢斗(25=NTT東日本)が6日、都内で記者会見を開いた。

1月マレーシアでの交通事故後、同15日に成田空港に帰国して以来、約2カ月ぶりに公の場に姿を見せ、事故当時の様子から現在までの生活を赤裸々に語った。さらに応援してくれるファンのため「東京オリンピック(五輪)で金メダルを目指す」と言い切った。今後はリハビリをしながらトレーニングを続け、5月以降の復帰を目指す。

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「東京五輪で金メダルを取りに行く」。会見場にスーツ姿で登場した桃田の口から普段聞かれない言葉が出てきた。これまでは「一戦一戦の積み重ね」と慎重だった。復帰会見で、事実上初の金メダル宣言。「試合に出られない中で、期待してくれる方たちに恩返ししたい。今後のバドミントン界のためにも、誰もが注目する大会で結果を残したい」と、宣言の理由を説明した。

事故後にさまざまな情報が飛び交う中「自分の口でみなさんの前で話したい」との強い思いで、今回の会見が実現した。事故当時の様子から「何が起きたか分からなかった」と包み隠さず話し始めた。早朝の出発で車中で寝ていると、衝撃で目が覚めた。「ケガで動けなかった。混乱していたのでその時の感情は覚えていない」。朴監督に「僕はまだバドミントンできますか?」と聞き「しっかり治せばまたコートに戻れるよ」と言われた事は覚えている。ただ、衝撃の大きさを物語るように、そう言われた場所が事故現場か病院かは定かではないという。

2月4日の合宿後「シャトルが二重に見える」と目の不調を訴え、離脱。右眼窩(がんか)底骨折が判明し手術を受けた。13日の退院後は実家のある香川で家族と過ごした。「安心した生活を送ることができたのは家族のおかげ」と順調に回復し、先月末から練習に復帰。まだ試合形式の練習はできないが痛みもなく「シャトルははっきり見えるし、今まで通り納得できるぐらいの精度で打てている」と表情は明るい。

実戦復帰は団体戦で国・地域別対抗戦トマス杯(5月13日開幕、デンマーク)の可能性が高い。新型コロナウイルスの影響で、今後A代表は海外合宿を行いながら大会に参戦する。A代表が日本に戻る予定の熊本合宿(5月1日)から合流しそうだ。「コートに立つと動きたくなるので、焦らずゆっくり。少しでもセーブしていくのが課題」とはやる気持ちを抑えながら言った。

昨年訪問した小学校の子供たちから手紙を送られたり、尊敬する仲間の選手たちからSNSで励ましのメッセージをもらった。ツイッターの#(ハシュタグ)には必ず「感謝」、「初心を忘れずに」と表記する。16年リオ五輪は自身の賭博問題で出場できなかった。五輪前に再び訪れた試練。折れかけた心を奮い立たせてくれた周囲の支えと金メダルへの期待を無駄にするつもりはない。苦難を乗り越えた先に世界の頂点がある。【松熊洋介】