1年後は桃田賢斗も安泰ではない。 東京五輪での勢力図を占う

1年後は桃田賢斗も安泰ではない。 東京五輪での勢力図を占う

先の見えない戦いがつづいている。

 新型コロナウイルスの蔓延は、いまだ収束の兆候がない。スポーツも延期や中止の話題がつづいている。1年延期となった東京五輪は、2021年の7月23日に開幕することが3月中に発表されたが、宙に浮いたままの出場権獲得条件などは、ほとんど進展がない。試合をいつから行なえるかわからないのだから、当然だ。

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 東京五輪で、日本にメダルラッシュの期待がある注目競技のバドミントンも、3月中旬に終えた全英オープンを最後に、国際大会は中断されたままになっている。

 五輪の出場権を左右する世界ランキングは、直近1年間の成績を反映させて決めるが、大会が行なわれないまま時間が進んでいく状況になっているため、世界バドミントン連盟(BWF)は、3月末にランキングの凍結を発表。全英オープンの結果を反映させた3月17日時点のランキングのままだ。

 本来であれば、4月末の時点で五輪出場レースが終わり、出場権獲得選手が決まる予定だったが、中断されたレースの再開方法もまだ決められない状況にある。スポーツ以前の問題だけに解決は困難で、見えないことだらけだ。そんななかでも、選手や関係者は、1年後に五輪が開催されることと、それ以前に試合を行なえる日が来ることを信じて進んでいくしかない。五輪の延期が決まった時、「桃田にとっては、よかったんじゃないですか」という声を何度か聞いた。男子シングルスで18年秋から世界ランク1位をキープし、世界選手権を2連覇している桃田賢斗(NTT東日本)は、日本勢で全競技を通じて金メダル獲得の可能性が高いと見られ、大きな期待を受けている。

 しかし、今年1月にマレーシアマスターズに優勝した直後、当地で交通事故に遭って負傷。一度は軽傷と診断されたが、2月に右目の眼窩底(がんかてい)骨折が判明して手術。復帰が遅れる見込みとなり、今夏までの完全復帰が心配されていた。

 リハビリ期間に余裕ができ、調整期間が長くなったことは確かだ。よりコンディションが整った状態で、桃田が五輪の舞台に立てる可能性は高まったと言えるのかもしれない。しかし、それが金メダル獲得の確率アップに直結するかというと、それほど簡単な話ではないように思う。

 たとえば、ライバルの一人である石宇奇(シー・ユーチ/中国)も似たような状況にある。石宇奇は、16年リオデジャネイロ五輪後に台頭した中国の新エース。桃田には2勝4敗と負け越しているが、直近となる19年5月の男女混合国別対抗戦スディルマンカップ決勝戦では、桃田を破って日本の優勝を阻止している。

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