ケニアで見た大迫傑が強い理由、守りを知らない攻めのメンタル…いざ東京マラソン〈上〉

引用元:スポーツ報知
ケニアで見た大迫傑が強い理由、守りを知らない攻めのメンタル…いざ東京マラソン〈上〉

 残り1枠の東京五輪代表切符を争うMGC(マラソングランドチャンピオンシップ)ファイナルチャレンジ男子第2戦の東京マラソンが3月1日、東京都庁~東京駅前行幸通りの42・195キロで行われる。スポーツ報知では「いざ東京マラソン」と題し、3回にわたって注目ポイントを紹介する。第1回はケニアを拠点に勝負に挑む日本記録保持者・大迫傑(28)=ナイキ=の精神面の強さと素顔を、現地で練習をともにしたプロランナーの須河宏紀(28)=Volare Sports=が語った。

 昨年9月のMGCで五輪内定を逃した悔しさが、“孤高の男”大迫をケニアのイテンに向かわせた。標高2400メートル。昨年12月、階段を上り下りするだけで心拍数が急上昇する「ランナーの街」に米国から拠点を移した。現地で一緒に練習した須河は、日本記録(2時間5分50秒)保持者の強さの一端を垣間見た。

 「すごいと思ったこと? やっぱり、足が速い(笑い)。守ることを知らないというか、ひたすらに攻める。五輪代表が懸かるレースを前に初めての場所、しかもケニアでの合宿。そういうメンタリティーの部分でも誰よりも攻めている」

 現地での練習メニューの詳細は“極秘”だが、日本の実業団で活躍したバルソトン・レオナルドらケニア人ランナーとともに行い、量・質とも高いレベルでこなしていたという。

 長野・佐久長聖の大迫と富山商出身の須河は高校時代は「あいさつ程度」の間柄だった。アフリカの大地で約10年ぶりの再会。大きく印象は変わっていた。

 「高校時代は『強い選手としか話さない』みたいな感じでした。弱い選手と群れたくないというか。今は米国に行ってランナー以外の人との関わりを経験したからか、価値観の軸がひとつじゃなくなったのかなと思う。大学卒業後のランナーの価値について、なども話しますよ」

 オンとオフの差も大迫の魅力だ。普段の生活では意外な素顔をのぞかせる。

 「とりあえず、すごくお酒を飲む(笑い)。よく食べて、よく飲む。生きたままのヤギとトリを買ってきて、自分たちで調理してみたり。ここでしかできないことへの挑戦だったり、好奇心みたいなものは、まるで少年みたい」

 大迫は昨年9月のMGCは3位で最も代表3枠目に近いが、前日本記録保持者の設楽悠太(28)=ホンダ=、日本歴代5位の井上大仁(27)=MHPS=らライバルも強力。ケニアでの経験が勝負を左右すると須河はみている。

 「ケニアでの合宿中、大迫自身がクリアすべきと考えていたものは、消化できているようにみえた。米国では一人で練習することが多かったかもしれませんが、こっちでは誰かのグループに入るのではなく、自ら(グループを)つくって競い合ってやっていた。万全にしか見えない大迫が負けることをイメージするのは正直、難しい」

 間近で大迫の強さを見た須河は、キッパリと言い切った。(太田 涼)

 ◆須河 宏紀(すがわ・ひろき)1991年6月26日、富山・南砺市生まれ。28歳。利賀中ではバドミントン部で、富山商高から本格的に陸上を始めた。中大2年から3年連続で箱根駅伝に出場し、2012年7区9位、13年3区12位、14年10区15位。卒業後はDeNAで競技を続け、17年からはサンベルクスに所属した。自己記録は1万メートル28分56秒40、ハーフマラソン1時間3分25秒、フルマラソン2時間11分46秒。170センチ、54キロ。家族は妻。 報知新聞社