筑波大ほしぞら野球教室 原点は「楽しく遊ぼう」

引用元:日刊スポーツ
筑波大ほしぞら野球教室 原点は「楽しく遊ぼう」

<週中ベースボール>

野球で楽しく遊ぼう! 筑波大(茨城県つくば市)で開催されている「ほしぞら野球教室」では、大学院生がコーチを務め、趣向をこらしたメニューで「野球を楽しむ」を実践している。野球人口減少が叫ばれる中、満点の星の下、子どもたちの元気な声と笑顔が輝いていた。野球の原点に返り、子どもたちの可能性を広げる取り組みに密着した。

【写真】筑波大学の川村卓准教授

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午後5時30分。筑波大の体育館に子どもたちが集まってきた。手には体育館で履く室内履き。服装はトレーニングウエアなど、思い思いのスタイルだ。この日集まったのは22人。同大野球コーチング論研究室の大学院生による「ほしぞら野球教室」の始まりだ。

まずは、ウオーミングアップで「野球版ポートボール」が始まった。子どもたちは2つに分かれ、ゴムボールをパスしながら、バスケットゴールの下に立つゴールマンを目指す。キャッチングはすべてグラブ。コーチの美延慎也さん(33)は「野球で一番大切な、捕って投げるという動作ができるように工夫しています」と話す。全員でボールを追いかけるため運動量が多く、体を温める効果も。ボール回しも頻繁に行われ、グラブの使い方も自然に覚えていくという。

子どもたちは右へ左へ。コート内を縦横無尽に走り回り、元気な声が響き渡った。その後は、ゴムボールとプラスチックのバットを使い試合形式でプレー。たっぷり約2時間、汗を流した。

野球の楽しさを伝えている。この教室は2005年、筑波大准教授で硬式野球部の川村卓監督(49)が、技術指導を中心に始めた。しかし野球人口の減少に加え、最近ではルールさえも知らない子どもがいることを知る。09年ごろからは、野球経験がなくても気軽に取り組めるよう、遊びを入れたプログラムに変更した。攻撃、守備は何人いてもいい全員野球。「ならびっこベースボール」「パラボリックスロー」。美延さんは「誰が来てもいい。チームも関係ない。遊びながら野球を楽しむ趣旨のメニューを考えています」。大学院生にはコーチングを学ぶ場にもなっている。

イメージは「公園」だ。ひと昔前、放課後は野球が子どもたちの遊びだった。現在はテレビゲームの普及や野球禁止の公園も増え、野球チームに入るしか選択肢がない。しかし、親の負担が大きいなどハードルが高く、野球人口減少に拍車をかけている。

野球はもっと身近で楽しいものだったはず。「ほしぞら野球教室」は、野球の原点に返る取り組みだ。「公園では、何世代にもまたがった子どもたちが集まり、年下の子どもは上手なお兄さんのプレーや振る舞いを見て学ぶ。昔はそうやって遊びや社会性を自然と覚えていったと思うんです」と見延さん。野球経験は関係ない。エラーをしても怒らない。野球という遊びを通して子どもたちの社会性を学習する。世代をまたいだ遊びが、貴重な経験として生きていく。

「昔の公園って近所のおじさんやおばさんが見てないようで見ていたでしょう。それと一緒。今はそんな環境がないので、僕らがそれを提供しているんです」。この日が2回目の参加という韓国人のアンディー・ハー君(8)は、来日したばかりで日本語も話せず、野球も未経験。「お友達もできて楽しい。ちょっとはうまくなりました」と目を輝かせた。

野球に夢中になっている間に日は暮れ、空には満天の星。キラキラ輝く星に見守られ、子どもたちはその可能性を大きく広げている。【保坂淑子】

<練習メニューの一例>

▽ならびっこベースボール 攻守2チームに分かれてプレーボール。守備側は、打球を捕球した選手を中心に周りを囲み、手をつないでみんなで座り「アウト」と叫ぶと「アウト」が成立する。野球のルールを単純化しているので、小さな子どもでも楽しめる。全員でボールを追いかけるため、運動量を確保できる。

▽パラボリックスロー 大きなゴミ箱などに目がけてボールを投げ入れる。距離を変えたり、ゴムボールやソフトボール、バドミントンのシャトルを使用。バスケットボールのフリースローと同様で山なり(パラボリック)のボールを投げ、放物線を描くように目標物に投げることにより、目標物までの距離やどれくらいの力で投げたらいいかが理解でき、制球力が向上する。力の加減も身に付く。

◆ほしぞら野球教室 毎週水曜日(冬季は火曜日、医学部体育館で)。筑波大硬式野球部グラウンド横の多目的グラウンドにて午後5時半より開催。登録費等はなく、参加費は1回500円(当日支払い)。年間を通じたスポーツ保険に別途加入。参加希望者はメール(hoshizora.bbc@gmail.com)で連絡を。現在は新型コロナウイルス感染拡大の影響で休止中。再開は未定となっている。