マレーシア初のMMA世界王者を目指す 美しき影猫の正体

マレーシア初のMMA世界王者を目指す 美しき影猫の正体

マレーシアの人気スポーツといえばバドミントン。老若男女を問わず中華系のマレー人たちはシャトルを打つ。

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その一方で格闘技は南アジアをルーツとする武術『シラット』が根付くものの、お世辞にもメジャーとはいえない。

それでも、国際的に活躍するファイターが登場すれば、人々は大歓声をあげる。昨年、4年ぶりに復帰した秋山成勲に辛酸を嘗めさせたアギラン・ターニはマレーシアの男子MMAのパイオニアとして期待されている。 マレーシア初のMMA世界王者を目指す 美しき影猫の正体 アギラン・ターニ vs 秋山成勲 では女子のそれは誰かといえば、ジヒン・ラズワンで決まりだろう。ごく普通の少女として育ったラズワンだったが、ふとテレビで目にした韓国の女子格闘家特集が彼女の運命を変えた。

「私も格闘技をやりたい」

ラズワンは心の奥底から湧き出てくる感情を抑えることができなかった。誕生日プレゼントの代わりに両親が入会金を払ってくれたおかげで、近くのジムに通うようになる。そこでムエタイ、中国武術、ブラジリアン柔術など様々な格闘技の練習に励んだ。

2016年からラズワンを指導するメルビン・ヨーは入門当初から彼女のポテンシャルの高さに注目していた。

「ラズワンの長所は物事をスピーディに学ぶ能力を持っていることです。教えたばかりの新しい技術を実戦的な場面で使うこともありましたね」 マレーシア初のMMA世界王者を目指す 美しき影猫の正体 ジヒン・ラズワン MMAは地元のアマチュア大会で10戦のキャリアを積み上げたあとにプロ入りしたが、その間ムエタイや中国武術など他競技の大会にも積極的に出場した。なぜ?

「ラズワンは弱点が多いという指摘もあったので、いろいろな格闘技で学ばせる機会が欲しかった」(ヨー)

地元でプロデビュー戦を飾った直後、ラズワンはONEと契約した。ONEではいきなり3連勝を飾ったが、アジアの山は険しい。2019年12月にはのちに山口芽生を破るデニス・ザンボアンガ(フィリピン)に敗れた。現在ONEでは4勝2敗というレコードだ。

ONEが活動を再開すればラズワンはベトナム系米国人のビー・ニューイェンとの対戦を熱望するが、ニューイェンは連敗中。ならば逆にラズワンとの一戦を希望するボズヒナ・アントニア(ミャンマー)やONEで3連勝中の平田樹との一戦の方が現実味はある。 マレーシア初のMMA世界王者を目指す 美しき影猫の正体 テレビ東京 ONE Championship 普段はジムにいてもおとなしすぎて、いるのかいないのかわからないことから“影猫“というニックネームをつけられたラズワンは静かに闘志を燃やす。

「格闘技はゼロからのスタートだったけど、ONEで夢を追い続けてきたから今の私がある。すべてのマレーシア人に『私のようになれる』チャンスがあることを伝えたい」

マレーシア初のMMA世界王者になるため、美しき影猫は新型コロナの収束を待つ。

(スポーツライター 布施鋼治) テレビ東京 ONE Championship