「連覇するには私たちしかいなんです」タカマツ生みの親が語る金メダル後の2人 たびたび母校を訪れていた

引用元:中日スポーツ
「連覇するには私たちしかいなんです」タカマツ生みの親が語る金メダル後の2人 たびたび母校を訪れていた

 時々ふらりとやってくる教え子は、体育館の隅から後輩たちの練習を見つめていた。自らの原点を振り返るように…。

 19日の会見でペア解消を発表したバドミントン女子ダブルスの高橋礼華(30)、松友美佐紀(28)組=日本ユニシス=は優勝した2016年のリオデジャネイロ五輪の後、母校・聖ウルスラ学院英智高(仙台市)をたびたび訪れた。2人一緒には来ない。必ず1人で来る。同高でシングルス選手だった2人を組ませた「タカマツ」生みの親、田所光男総監督(69)は語る。

 「お互いギクシャクしていた時なんじゃないですか。『先生、ちょっと寄ってもいいですか』なんて言って東京から日帰りで来る。座って練習を見ているだけ。それで心が落ち着く。で、自己満足して帰って行く。なんつうかね、気持ちの切り替えが上手だったよね」

 2人は最大の目標だった五輪制覇を成し遂げ、休む間もなく連戦につぐ連戦。気持ちの糸が切れたのか17年シーズンは結果が出せない。次の目標も見失い悩んでいた時期、2人にとって母校がなんとなく気持ちを落ち着かせてくれる居場所だったのだろう。再スタートを切るために羽を休めに来た。教え子の心情を察して、田所総監督も何も言わずに見守っていた。

 2017年の年末、2人は話し合いの時間を設け互いの気持ちを確認し、東京五輪での連覇を目標に掲げた。田所総監督にも、高橋から決意表明のメールが届いた。「連覇します。連覇するには私たちしかいなんです」

 若手ペアの台頭、熾烈(しれつ)な五輪選考レース、気持ちと体力の限界、そして五輪の1年延期…。夢に向かっていったが厳しい現実にぶつかった2人に、恩師は優しいまなざしを送る。「まずはご苦労様と言いたい。リオ五輪で金メダルを取り、日本バドミントン界の歴史を変えた。その功績は大きい。お疲れ様でした」。その原点となったコートでは今も後輩たちが羽を打ち、偉大な2人の背中を追う。最後に田所総監督は「たまたま余ったシングルスの2人を組ませてみたら、参ったなあって思うくらい、いいペアになっちゃって…」と苦笑いしながら振り返った。