「五輪が延期になってよかった」更なる進化を見せる奥原希望の決意

引用元:VICTORY
「五輪が延期になってよかった」更なる進化を見せる奥原希望の決意

2016年リオ五輪でメダルを獲得し、2017年世界選手権でも金メダルを獲得。次々に日本初を打ち立てる、女子バドミントン界期待の星、奥原希望選手。このコロナ禍でもYouTubeやSNSなどでも積極的に発信を続け、競技外でも日々存在感を強めている。そんな彼女が、各地への遠征再開を前に、コロナ禍での活動の振り返りと、競技面での近況、そして五輪に向けての意気込みについて語った。(取材・文=VICTORY編集部、写真=ベースボール・マガジン社)

「もっと変えていこうとする力があれば、変えられるものも多い」

―奥原選手は、YouTubeやSNSなどで、積極的に情報発信をされていると思うのですが、そういった活動を始めようと思われたきっかけはありますか?

奥原:元々、ヨーロッパの選手が試合後に、写真と共に試合の感想を書いているのを見て、それを真似しようと思ってはじめました。自分の反省にも役立ちますし、直接ファンにメッセージを届けられるっていうこともありますし。最初は日本語だけでやっていたんですけど、海外のファンもいらっしゃるので、是非英語でも書いて欲しいと言われて、日本語と英語で書くようになっていきました。そんな中で、投稿するのが当たり前になっていたんですが、コロナ禍で試合がない中で、何を伝えればいいんだろうっていうのは考えていました。

―そのコロナ禍でも継続して発信をされていましたよね。

奥原:応援してくださるファンの方たちのために、何かできないだろうかと考えて。毎日私の投稿を見て、少しでも元気になってもらえたらいいなと思って、投稿していました。それでも自粛期間は、怠けようと思えば怠けられる時間で。オリンピックもどうなるかわからないし、私にとっても葛藤があったんですけど、日記みたいに投稿していくことで、自分も何かをやる活力にもなりましたし、皆さんにとっても活力になればいいなという思いで発信し続けていました。

「もっとエンターテインメント要素を大きくしていかないと」バドミントン界への提言

「もっとエンターテインメント要素を大きくしていかないと」―バドミントン界の中ではあまり例のない「プロ」として活動されていますが、実業団所属のときとの違いはありますか?

奥原:私としてはプロだからできる、できないって思われたくなくて、バドミントンのトップ選手みんなに、良い方向へ向かおうって思ってもらいたいですね。現状維持じゃなくて、もっと変えていこうとする力があれば、変えられるものも多いので、みんなの力を借りながらやっていきたいと思っています。

―そんな中で、奥原選手が感じられる、日本のバドミントン界の課題はどのあたりにあるとお考えですか?

奥原:もっとエンターテインメント要素を大きくしていかないと、直接お客さんが会場に観に行きたいとは思わないんじゃないかなと。スポーツの迫力を感じるために、会場へ観に行こうと思ってもらえるようにしたいですね。競技人口自体は多いんですが、「観戦人口」っていうのを、もっと増やしていかなければならないと思っています。私たちとしても、リモート応援より、直接声援を受けた方が嬉しいので。特にインドネシアの会場は声援がすごくて、シャトルを打つ音とかも聞こえないですけど、お客さんが楽しんでいる雰囲気もすごく伝わってきます。シャトルを打つ音が聞こえないっていう、プレーに向いた環境とは言えない状況なんですが、それでもバドミントン選手はみんなインドネシアでプレーしたいって言いますね。

―そんなに観客の皆様の力は大きいんですね。

奥原:観客の皆様がどれだけ楽しんでいるかが。私たちのモチベーションにもなるので、日本のスポーツ全体の観戦においても、盛り上がっていって欲しいですね。選手たちがバドミントンに限らず、他のスポーツでも世界トップで活躍することが多い中、せっかく身近でこんなに大きなイベントがあるのに、それを十分に楽しめていないというか。終わってからその大会を知ったとかであれば、本当にもったいないと思いますし、日常生活の一部にスポーツがあってほしいなって思います。

―スポーツ観戦人口を増やしていくためには、どのようなことが必要だとお考えですか?

奥原:会場に行くまでのハードルをなくしていくこと、そして会場に行くまでの労力を使ってまで、見に行きたいと思えるエンタメを作っていかないといけないと思います。ただ試合を観るだけだと、リモートでいいかなって思ってしまうので、試合以外の部分でも積極的に取り組んでいかなければならないと思います。飲食だったり、それこそ飲酒も認めて、体育館の中で販売するとか。そういう施策でどんどん、スポーツ観戦をエンタメ化していくことが必要かなと。次ページは:五輪延期は「しょうがない」

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