1日たった38歩の人も? 在宅ワークで腰痛民が増えるワケ、気を付けたい「猫背姿勢」

引用元:THE ANSWER
1日たった38歩の人も? 在宅ワークで腰痛民が増えるワケ、気を付けたい「猫背姿勢」

 忙しい大人向けの健康術を指南する「THE ANSWER」の連載「30代からでも変われる! 中野式カラダ改造計画」。多くのアスリートを手掛けるフィジカルトレーナー・中野ジェームズ修一氏がビジネスパーソン向けの健康増進や体作りのアドバイスを送る。

【動画】中野氏が紹介「腰の痛みが楽になる! デスクでできるストレッチ」全4パターン

 新型コロナウイルス感染拡大で在宅ワークが進んだことにより、運動不足になる人が増加中。とりわけ、懸念されているのは腰痛だ。中野氏はその原因を分かりやすく説明するとともに、腰痛対策に最適の「デスクでできるストレッチ」も紹介してくれた。

 ◇ ◇ ◇

 運動習慣のある・なしに関わらず、長時間、イスに座った姿勢で過ごしていると、「腰がギシギシいう」「重たい」など、腰周りに痛みや違和感、疲れを感じる方は多いと思います。

 以前もこの連載で触れましたが、腰痛の85%は、日々の不良姿勢や不良動作、そして筋力不足による姿勢の乱れ、または心理的なストレスが原因になっていると考えられています。代表的な不良姿勢が「猫背姿勢」。猫背姿勢は、頭の位置が前に出て、腰や背中が丸くなるのが特徴。骨盤が後傾するため、腰椎の自然なカーブが崩れ、腰回りにかかる負担がどうしても増えてしまいます。

 さらに長時間、同じ姿勢でいると、血流も悪化。筋肉に必要な酸素と栄養素が行き渡らなくなり、筋肉はどんどん硬くなります。すると、脳はヒスタミンやブラジキニンといった痛みのもととなる物質を分泌し、「痛み」が現れるのです。

 デスクワークの時間が長い人は同じ姿勢をとり続けるため、どうしても体の一部の筋肉に負担がかかり、楽に感じる「猫背姿勢」をとってしまいます。さらに、在宅勤務に切り替えている方は、輪をかけて体を動かす機会を失っています。

1日たった38歩の人も? 特に動かしたいのは骨盤周りの「腰方形筋」と「腸腰筋」
 同じデスクワークでも会社であれば、通勤時やトイレ休憩、あるいはランチをとるために外へ出るなど、ちょこちょことデスクから離れて歩く機会もあります。しかし、在宅勤務ではせいぜいトイレやキッチンまでを往復する程度。仕事中だけでなく、食事の時間、おそらくプライベートの時間もイスやソファに座るため、1日の大半を座って過ごしているでしょう。

 これでは、腰に疲れがたまりやすくなる、腰痛が重くなるのも、当然。私の知人も「ウエアブルウォッチをチェックしたら、1日38歩しか歩いていなかったよ!」と驚いていましたが、恐らく多くの方が、似たり寄ったりの状況だと思います。

 痛みや疲労感は体からのSOS。解消するには、体を動かし、血流を促すことが有効です。腰が痛いな、疲れてきたなと感じたら、いったん仕事の手をとめて、体を動かしましょう。

 特に動かしたいのは、骨盤周りのインナーマッスル、「腰方形筋」と「腸腰筋」です。腰方形筋は姿勢を維持する際に働き、腸腰筋は大腿骨と骨盤と腰椎(背骨)に付着する、上半身と下半身をつなぐ筋肉。どちらも階段を上る、ジョギングをする、何かをまたぐという動作の際に働くため、家の中を歩いているだけでは使われにくい。また、イスに座る時間が長いほど固まりやすいので、意識して動かしてほしい筋肉です。

 合わせて太ももの筋肉も伸ばしましょう。太もも前面の大腿四頭筋は体のなかでも大きな筋肉群。大きな筋肉ほど、痛みや疲労を感じやすい傾向があるので、腸腰筋とともにしっかり伸ばします。続けて太もも裏側のハムストリングスも伸ばします。太ももの裏側はイスに座っている間、常に座面に押し付けられ、圧迫された状態です。そのため、血行が阻害され、硬くなりやすい。腰痛の原因にも深く関係しています。

 今回は仕事の合間にできるストレッチを、動画で紹介しています。かかる時間はそれぞれ1~2分程度。トイレに立つ時や、オンライン会議の前後、終業時など、仕事が途切れるタイミングや立ち上がったついでに、ぜひ続けてみてください。

長島 恭子
編集・ライター。サッカー専門誌を経てフリーランスに。インタビューや健康・ダイエット・トレーニング記事を軸に雑誌、書籍、会員誌などで編集・執筆を行う。担当書籍に『世界一やせる走り方』『世界一伸びるストレッチ』(共に中野ジェームズ修一著、サンマーク出版)、『つけたいところに最速で筋肉をつける技術』(岡田隆著、サンマーク出版)、『カチコチ体が10秒でみるみるやわらかくなるストレッチ』(永井峻著、高橋書店)など。

中野ジェームズ修一
1971年、長野県生まれ。フィジカルトレーナー。米国スポーツ医学会認定運動生理学士(ACSM/EP-C)。日本では数少ないメンタルとフィジカルの両面を指導できるトレーナー。「理論的かつ結果を出すトレーナー」として、卓球の福原愛選手やバドミントンの藤井瑞希選手など、多くのアスリートから絶大な支持を得る。クルム伊達公子選手の現役復帰にも貢献した。2014年からは、青山学院大学駅伝チームのフィジカル強化指導も担当。主な著書に『下半身に筋肉をつけると「太らない」「疲れない」』(大和書房)、『世界一やせる走り方』『世界一伸びるストレッチ』(サンマーク出版)、『青トレ 青学駅伝チームのコアトレーニング&ストレッチ』(徳間書店)などベストセラー多数。 長島 恭子 / Kyoko Nagashima