C大阪森島社長「ファミリー」でリーグ初V目指す

引用元:日刊スポーツ
C大阪森島社長「ファミリー」でリーグ初V目指す

就任2年目を迎えたセレッソ大阪の森島寛晃社長(47)が、今季最大の目標に「J1リーグ優勝」を掲げた。日刊スポーツのインタビューに答え、そのキーワードには「ファミリー」を挙げた。

【写真】新社長就任会見に臨んだ森島氏

選手としても日本代表に上り詰めた愛称モリシ社長が、昨年の反省や今年に懸ける意気込みを語った。

-あっという間の1年目だった

森島社長 日々反省しかなかったですね。何とか元気を出してやっていこうとスタートしたが、振り返っても各部署のスタッフが頑張ってくれた。例えば営業は自分も経験したことがなかったし、サポーターとどう接点を持ってるのかも分からなかった。理解していかないと、自分からしっかりアプローチできない。改めて深い部分だと感じたし、みんなの働きが原動力になった。

-特に心がけたのは

森島社長 昨年は大阪市役所から始まり、区役所、堺市を含めて(ホームタウンの)全区役所を1年間かけて、ごあいさつに行った。通天閣、天王寺動物園など(公共施設)を含めると50カ所くらいです。

-現役時代のような運動量、小回りのよさです

森島社長 何をおっしゃいますか(笑い)。ごあいさつしたことで、よりセレッソに親近感を持ってもらって、各地域のイベントに招待される機会もあった。そこでスタジアムに新たに足を運んでもらっている人がいたり、そういうセレッソ・ファミリーの存在が大きな力でした。

-1年目の社長業を自己採点すれば

森島社長 あいさつ回りだけでしょうね、できたのは。だから50点。いいとか、悪いとか以前に、自分の中で、もっとやらないといけないという思いが大きい。先頭に立てたかというと間違いなくできていない。2年目は自分自身が、どれだけ業務を整理して実行できるかです。

-チームは昨年、スペイン人のロティーナ監督1年目でJ1最少失点の鉄壁守備を実現させ、そして5位につけた

森島社長 序盤こそ勝ち点を奪えず、9試合(2勝2分け5敗)は勝ちきれない試合が続いた。後半戦は1度2連敗はあったが、最後12試合は9勝1分け2敗。試合を重ねるごとに選手は自信を持って(2-0で勝った)最終節大分戦は躍動感あふれる、おもしろい試合だった。年間5位に加え、最少失点はこれまでの積み重ねでできたこと。1つ、自信になった。

-今年の目標は

森島社長 MF清武主将、FW柿谷ら選手が、J1リーグで優勝したいと口に出している。昨年はあと1歩だったACL出場権をつかみ、初のリーグ優勝を目指す。クラブの思いは同じです。

-ところで先ほど「セレッソ・ファミリー」という言葉が出た。このクラブでは昔から聞かれる重要ワードです

森島社長 クラブが大好きと思ってもらえることが第1歩。それは94年に就任した初代監督のパウロ・エミリオさん(ブラジル)から学んだこと。みんなが目標を持って達成していくには、誰1人違うところ(を)見て(いて)はだめ。一丸となって、ファミリーとしてぶれずにやればと、ずっと言われていた。そこから歴史が始まり(94年JFL優勝で)Jリーグ昇格が決まった。セレッソからは世界で活躍する選手も出てきた。エミリオさんが土台を作ってくれたおかげだと思います。

-世界といえば、新人のFW西川潤選手(桐光学園)がバルセロナから注目されているとスペインで報じられた

森島社長 そういう選手は魅力的だし、セレッソで試合にしっかり出てステップアップしてほしい。成長するために大事なものは、しっかりクラブも理解してあげないといけない。夏に向けて試合にしっかり絡んでいかないと、いや、間違いなく絡んでくる選手です。

-活躍していれば、いずれ世界へ羽ばたくことに反対はしない

森島社長 まず活躍していく中で、選手にとって評価されるのは何より。そうですね、存在感を出してチームを引っ張ってくれれば。クラブの価値を高めてくれるような活躍を楽しみにしている。

-クラブの伝統として、香川、乾、南野ら歴代の主力スター選手は世界で活躍している

森島社長 日本代表、アジア代表へ成長していくのがこのクラブのよさ。東京五輪代表に1人でも入ってほしい。瀬古、西川ら世代別代表に招集された選手を入れると、セレッソには五輪候補が結構いる。五輪イヤーにJ1で優勝を成し遂げると、今後に語り継がれるクラブになるでしょうね。

-今季から強化責任者が前任の大熊清氏(55)から梶野智氏(54)へと交代があった。狙いは

森島社長 チームの年齢層が全体的に高くなっていく中で、これからは次の世代がクラブにかかわっていかないとということ。このままスライドして終わらないように。セレッソは若い選手が出てくるのがよさでもある。大熊さんはここまで結果(を)出してくれたし、クラブとしては感謝している。(世代交代は)貯金があるうちにしないといけないと、ということで選択させてもらった。

-ヴィッセル神戸が昨季の天皇杯と今季は富士ゼロックス・スーパー杯で優勝、ガンバ大阪も元日本代表DF昌子を獲得した。今年は関西ダービーが熱そうだ

森島社長 神戸は天皇杯で優勝した勢い(を)持って臨んでくるでしょう。G大阪との大阪ダービーはどういう状況であっても負けられない。相手がどういう補強していても関係ない。大阪や関西では負けてはならない相手です。

-実直な社長の人柄は有名だが、自宅ではどんな父親ですか

森島社長 今春に中学に進む12歳の娘がいますが、常にスパルタですね(笑い)、いや絶対うそです。甘やかしたらだめですが、娘を怒れないから僕が嫁に怒られる(笑い)。教育は嫁に任せているわけではないんですが。娘はバドミントンが大好き。東京五輪で何とか桃田選手の試合を見せてやりたいんですが…。お願いします、チケットを申し込んだんですが、ものの見事外れました。何とかならないですかね(笑い)。

【取材後記】現役時代の森島社長を知っている記者とすれば、今のイメージは180度違う。95年に初めて日本代表に選ばれたが、何を聞いても「頑張ります」の連呼。いわゆる見出しになるようなコメントがなく、記者泣かせだった。だが社長就任後は、とにかく口数が多くなった。営業的な仕事が増え、必然的に話術も求められるからだ。トップとしてあらゆる決断や選択にも迫られ、その苦労は想像に難くない。

記事にもあるように、セレッソの強みはクラブ全体に家族的な雰囲気があること。95年にJリーグ1年目をスタートさせたが、当時から残るスタッフの多さは屈指だろう。比較的離職率の高いこの業界だが、セレッソには各ポジションに古参職員がいる。初代エミリオ監督の通訳だったスタッフは今、クラブ内のホームタウン事業の重責を担うし、韓国の英雄FW黄善洪(ファン・ソンホン)の通訳だったスタッフは運営のスペシャリストに。そのクラブで育ち続け、腰の低さは日本一のモリシ社長がトップに立つ現在、より進化したクラブの未来像が描けると確信している。【横田和幸】