ドラフト1位候補の明石商・中森俊介の兄が語る弟の「今」。ミュージシャン志望の竜太さん

引用元:スポーツ報知
ドラフト1位候補の明石商・中森俊介の兄が語る弟の「今」。ミュージシャン志望の竜太さん

 8月10日に開幕予定だった第102回全国高校野球選手権大会が中止になり、今秋ドラフト1位候補の明石商・中森俊介投手(3年)は、中止になった今春センバツに続いて甲子園のマウンドに立つことができなかった。最速151キロ右腕を1年春から取材してきただけに、最後の夏に活躍する姿を見られないのは残念でならない。

 4月9日から学校が臨時休校のため、兵庫・明石市内の下宿先を出て、丹波篠山市の実家に戻っている。中森の兄・竜太さん(20)は「中止になることを予想していたみたいで、驚きはなかったようです。落ち込んだ様子もなく、次のステージに向かって頑張っています」と、弟の近況を聞かせてくれた。

 竜太さんは、小学2年から中学3年まで弟と同じチームで野球をしていた。幼少時は、先に野球を始めた兄が、3学年下の弟にキャッチボールの相手をしてもらっていた。「ルールを理解して、僕のボールも取れていた。いい練習相手になってくれていた」。これが中森と野球の出会いだった。

 休校期間中は毎日、兄が弟のキャッチボール相手を務めている。竜太さんは「素人同然の僕に速い球を投げてくる。それだけならまだしも『次カーブな』『チェンジアップいくわ』と、えぐい変化球を交えながらバンバン投げてくる。『相手を考えろよ!』と。『ラスト1球』からが長い! 気に入らないと、そこから10球以上も投げるので強制終了させます。グラブをしていた左手がパンパンです」と、苦笑する。

 バドミントンのシャトルを使っての打撃練習や坂道ダッシュにも付き合う。弟はウェートトレーニングなどにも取り組んでいる。「1日の3分の1はトレーニングしている。一時は90キロに増やして体脂肪を落として、86、87キロをキープしている。筋力を落とさず、理想の体になろうとしている。モチベーションを上げて、楽しくやっているみたいです」。竜太さんの言葉を聞くと、気持ちを切り替えようとしている中森のメンタルの強さを感じる。

 弟はプロ野球選手、兄はプロのシンガーソングライターになることを目指している。音楽が趣味の父に影響を受けた竜太さんは、中学3年から音楽にのめり込んだ。2019年6月には、丹波篠山市で開催された「NHKのど自慢」にテレビ出演した。ポルノグラフィティの「サウダージ」を披露して、合格の鐘を鳴らしたこともある。

 現在は大学に通いながら、月に4、5回程度、ライブハウスに出演している。自ら作詞、作曲をし「強めの野太い声で勝負したい」とオリジナル曲のほか、大好きな「WANDS」などの曲をカバーしている。「時の扉」を歌う動画を見せてもらうと、旧ボーカルの上杉昇に声が似ていた。もちろん、歌唱力も抜群だ。

 弟と同様に、兄も新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けている。2月末を最後にイベント出演ができなくなった。社会情勢を考慮して、ストリートライブも自粛している。「身近なライブハウスがどんどんつぶれていって心苦しい。活躍できる場が少なくなっている」。ライブハウスの営業再開はハードルが高く、自身を売り込む機会がなくなっているが、創作活動や歌とギターの練習に励んでいる。今後は動画配信などに取り組む予定だという。

 「俊」「お兄ちゃん」と呼び合い、幼少時は「(弟と)ずっと殴り合いの喧嘩をしていた。よく家のガラスを割っていた。男兄弟にしても激しかった」と振り返る。「負けず嫌いで、絶対に『ごめん』と言わない。あいつが兄貴じゃなくてよかった(笑い)。ただ、頭は良かった。頭がキレる。口論になっても圧倒されるばっかり」と、弟の意外な一面を明かした。

 コロナ禍でともに実力をアピールするチャンスを失ったが、プロ同士で弟と“共演”する夢がある。「(プロに入ったら弟の登場曲を)作ってみたいですね」。弟のために初めて曲を書く日が来ることを、竜太さんは心待ちにしている。

(記者コラム・伊井 亮一)

※竜太さんのツイッターアカウントは「@RYUTA8122」 報知新聞社