コロナ禍でインターハイが中止、陸上部員の進路はどうなるか

引用元:VICTORY
コロナ禍でインターハイが中止、陸上部員の進路はどうなるか

 例年8月上旬に開催されるインターハイ(全国高校総合体育大会)は、1963年(昭和38年)から続く高校スポーツ界最大のイベントだ。夏季大会は、陸上競技、体操、水泳、バスケットボール、 バレーボール、卓球、サッカー、バドミントン、柔道など全30競技が行われる。

 今年は東京オリンピックと同パラリンピックのスケジュールを優先するかたちで、8月10~24日に開催予定だった。しかし、新型コロナウイルス感染拡大防止のため4月26日に「中止」が発表された。半世紀以上も続いてきた夢舞台だけに、大会が開催されないことの影響は計り知れない。高校生アスリートの”青春”が奪われただけでなく、彼らの”未来”が揺らいでいるからだ。

■例年とは異なるスポーツ推薦の「基準」

 文部科学省の「平成31年度国公私立大学・短期大学入学者選抜実施状況の概要」によると、2019年度入学者試験では国立大学が16.3%、公立大学では27.9%、そして私立大学では半数以上となる54.2%の学生がAO入試、推薦入試によって入学している。そのなかにスポーツ推薦も含まれている。

 これらの入学願書は運動部や文化部の全国大会を終えた8月以降に願書を提出するのが一般的だった。しかし、文部科学省は一般入試組に比べて早く進路が決定することで生じる学力差を問題視。コロナの影響もあり、今年の願書受付は9月15日以降とするよう各大学に通知している。

 スポーツ推薦の「基準」は大学によって異なるが、「全国大会8位以内」もしくは、「全国大会出場」というのがひとつの目安になる。例年ならインターハイの結果が進路にダイレクトにつながっていたが、今年はそういうわけにはいかない。大学側は有力選手の確保に力を注いでおり、例年なら「全国大会8位以内」の基準を今年は「同16位以内」に拡大したり、「全国大会出場」を「中止となった全国大会の出場権を獲得した戦績・記録」に修正するなど対応している。

■その中で陸上界はどうなっているのか

 日本陸連は7月3日、インターハイの中止を受けて、10月下旬に行われるU18日本選手権を代替大会の「全国高校大会2020」として開催すると発表した。従来は18歳以下が参加対象だったが、今回は特例として高校1~3年生の選手が対象になる。しかし、10月の大会ではスポーツ推薦の願書に間に合わないケースが大半だ。

 7月1日(~9月6日)からは、各都道府県が事前に指定した競技会を活用して、2020全国高等学校リモート陸上競技選手権大会が開催されている。こちらは、「全国の高校生アスリートへの活動モチベーションの維持と将来的にスポーツを充実した生活の一部と捉える心を育むため」という目的だが、世界陸連(ワールドアスレティックス)の「リザルトスコア」を用いた全国のポイントランキングをつけている。100m、200m、110mハードル、走幅跳びなどは風が記録に大きな影響を及ぼすが、リザルトスコアを用いることで、風の条件を補正したうえで、ランキングをつけることができるのだ。

 ただし、長距離種目は気温やレース展開でタイムが大きく変わってくるし、風速計の測定はしていないが、走り高跳びや円盤投げなども風がパフォーマンスに大きくかかわってくる。全国ランキングをつけても、インターハイのように同じ条件で戦うわけではないので、どうしても”結果”にバラつきが出てしまう。

 ただこのランキングが全国大会の結果に準じたものとして取り扱われることになるだろう。例年通りのインターハイはないが、3年生のスポーツ推薦は”通常通り”に落ち着くとみていい。次ページは:■このままでは選手と大学でミスマッチの可能性も

1
/2ページ