日本陸上フィールド界の至宝”北口榛花” ~世界標準の他競技経験がもたらす結果

引用元:VICTORY
日本陸上フィールド界の至宝”北口榛花” ~世界標準の他競技経験がもたらす結果

女子テニスの大坂なおみ(日清食品)、男子バスケットボールの八村塁(ウィザーズ)―。近年、日本選手として世界のトップレベルで新しいフィールドを切り開いている若いアスリートが相次いでいる。

陸上競技の女子でもそんな存在が出てきた。やり投げの22歳、北口榛花(JAL)。既に世界レベルの大会でも通用する日本新記録をマークしている。現在は新型コロナウイルスの影響で大会が軒並み取りやめ。試合での勇姿を見ることはできないが、外出自粛期間でもSNSでトレーニング風景を公開したり、ファンからの質問に答えたりと新時代の担い手らしい活動が光る。成長の過程も世界基準で、笑顔の似合うスター候補としてブレークの予感が漂っている。

▽メダル相当
これまでの経歴を振り返るだけでもポテンシャルの高さがうかがえる。北海道出身で、旭川東高に入学後に競技を始めると、2年時には早くも全国高校総体(インターハイ)や国体で優勝。3年時の2015年には世界ユース選手権で、日本選手としてこの種目を制した。競技開始から2年余りで早くも年代別の世界ナンバーワンに君臨。日本陸連から東京五輪で活躍が待望される「ダイヤモンドアスリート」に認定された。

男子100メートルなど、陸上競技ではとかくトラック種目に注目が行きがちだが、フィールド種目も面白い。やり投げの場合、女子のやりは長さ2メートル20~30センチ、重さ600グラムの規定。ハンマー投げや円盤投げなどと違って助走距離が30メートルほどある。選手が走りながらダイナミックにやりを投げ、高々と放物線を描いてグラウンドに突き刺さる光景は迫力満点だ。投てき種目は選手の体格に影響されやすく、伝統的に海外勢が強い。その点、北口は179センチ、86キロと恵まれている。

さらに飛躍を遂げたのが2019年だった。進学した日大の4年生として、5月の木南道孝記念で従来の記録を56センチ上回る64メートル36の日本新記録を打ち立てた。そして10月の北九州陸上カーニバルでは自身の記録を大幅に更新する66メートル00の日本新。これは2016年リオデジャネイロ五輪なら銀メダルに相当する好記録で、従来の日本女子の枠を飛び出すスケールの大きさだ。